強すぎるサムライ少女が異世界転移! 死地を求める戦国最強の剣豪がこの世界で斬るものとは?『異世界サムライ』

マンガ

公開日:2024/3/19

異世界サムライ
異世界サムライ』(齋藤勁吾/KADOKAWA)

 戦って、戦って、死にたい。そんな願いをもつ侍がやってきたのは異世界だった――。

 数ある異世界転移ジャンルのマンガのなかで、今もっとも注目してほしい作品のひとつが『異世界サムライ』(齋藤勁吾/KADOKAWA)だ。

 主人公は、戦国の世を最強の侍として“生き抜いてしまった”少女。異世界での彼女の活躍が本作の最大の見どころである。

 読み応えがある骨太のストーリーも魅力だ。しかも本作は小説などからのコミカライズではなく漫画オリジナルのため、物語はWebで発表されている本作を追うしかない(当たり前だが)。

 そして、注目せざるをえないのが、作者・齋藤勁吾氏の前作『傷だらけのピアノソナタ』(集英社)でもみせた「情熱を美しく、かつド迫力で描く」作画である。こればかりは読んで確かめてもらいたい。きっと本作のアツさが分かってもらえるはずだ。

 2023年2月にWeb連載を開始してから「次にくるマンガ大賞 2023」、「このマンガがすごい! 2024」オトコ編、「全国書店員が選んだおすすめコミック2024」などに次々とランクイン。単行本にはすでに重版がかかっているが、ぜひもっともっと多くの人に知ってほしいと、今キーボードを叩いている次第である。

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最強の侍が強敵を求めて異世界にたどりついた話

 戦国時代末期、月鍔ギンコ(つきつばぎんこ)は強者との死闘に飢えていた。ギンコは敵を斬り、師匠である父をも斬り、天下分け目の関ヶ原でも命の限り斬りまくった。

 太平の世になっても、腕におぼえのあった浪人たちを幾人も斬り伏せてきたギンコは、“剣鬼”と呼ばれていた。死に場所を見つけられない彼女は仏に祈る。

戦いの果てに死にたい。敵がほしい。自分が“鬼”なら悪鬼羅刹のはびこる地獄へ行きたい。

 刹那、ギンコは見たこともない世界に居た。目の前では巨大な龍と異形の魔物が人間を襲っていた。彼女は混乱するも、血の匂いを嗅ぎ、怒号と悲鳴を聞き、散らばる骸を目の前にして覚醒。一瞬でオークの集団を切り刻んでしまう。

 我に返ったギンコは、今居る場所は「日本の外の国」なんてものではないと気づく。森で出会った魔法使いのミコと話をして、異世界を確信したギンコは戸惑いつつも、都一つを灰にするような強力な魔物と、彼らと戦う力をもった戦士“勇者”の存在を知り、大笑いしてこう叫ぶのだった。

この世界にはまだ見ぬ希望があふれている!早く戦いたい!もっと早く来ればよかった!異世界万歳!

 こうしてギンコは、強者を求めて異世界を歩き出すのだった。

狂気の剣をふるう少女は本懐を遂げられるのか

 ギンコは一見、小柄でまつげが長い可愛いらしい少女である。しかしこの顔に大きな傷があり、腰に刀を差し、からからと笑い、熱を帯びた瞳で敵と“戦い”そのものを見つめる。ギンコは前述の通り、強き者との戦いに憧れていた。ただそれは、勝ち負けを決めたいわけではない。いつか「敵兵相手に一騎当千に斬りまくり、そして討たれたい」と考えていたからだ。

 ただ、彼女の不幸は“強すぎたこと”だ。彼女の居た世界では誰もギンコを倒せなかった。絶望していた彼女は異世界に足を踏み入れた。そこには魔物と戦う強者たちがいた。元勇者で今は教会のシスター・ギブリール、荒々しい火の勇者・グルニカ、巨大な斧をもつドワーフ族のヴォルス、法の魔法を操るドラクロなど。勇者である彼らと、嬉々として戦おうとするギンコ。その勝負の行方は――。

 死を肯定するような価値観はどこか歪んでいるようにも思える。しかしそれは、戦国時代の侍の生きざまなのである。異世界にあってもギンコは、今のところ自分を曲げることはなさそうだ。死が傍らにある戦場を駆けるギンコは幸せそうである。狂気が宿っているかのような彼女の剣は、いったい誰を(何を)、何のために斬るのだろうか。

 物語は第3巻でついに物語のラスボスになりそうな敵の存在が描かれた。風雲急を告げる展開はワクワクしかない……!

 ギンコが異世界でどう生き、どう戦い、本懐を遂げられるのか。これからますます話題になっていきそうな“激アツ”異世界ストーリーを、ぜひ体験してほしい。

文=古林恭

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