冷蔵庫も洗濯機も、明日食べる米もない! 親の離婚がきっかけで、限界貧困生活になった女性の物語

マンガ

公開日:2024/5/6

明日食べる米がない!

 時代の移り変わりと共に、人間の価値観も変わり続けている。かつてはタブーだとされていた離婚は、令和の今ではそう珍しいことでもない。しかし、子どもがいる夫婦が離婚するとその子どもに著しい影響を及ぼすこともあるため、慎重さが求められる。

明日食べる米がない!~親が離婚したら、お金どころか、なーんにもなくなりました!!~』(やまぐちみずほ/KADOKAWA)は、リアルな貧困生活エッセイだ。もしも子どものいる家庭で「離婚しよう」と思っている方は、1度本書を読んで離婚後の生活をリアルに想像してみてもらいたい。

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明日食べる米がない!

 著者のやまぐちみずほさんは、5歳のころ父親の借金が原因で両親が離婚。ずいぶん勝手なもので、いきなり家を出ていくように宣言され予期せぬ母とのふたり暮らしがはじまった。子どもなりに母に気をつかい一生懸命平気なフリをするも、「明日食べる米がない」ほどの貧乏生活を強いられる。こうした現実を見ると、子連れでの離婚におけるハードルの高さを実感する。資格や手に職を持たない母親が母子家庭を維持することは、想像を絶するほど大変なのだろう。

明日食べる米がない!

 著者の家には、冷蔵庫や洗濯機がない。前の家で使っていたものは、どちらも玄関の幅より大きいファミリー用サイズだったため、狭い新居には入れられなかったのだ。買い替えるお金もないため、生活に必須な家電を持たない不便な暮らしが続いていく。離婚後は生活費を稼ぐためさまざまな仕事を掛け持ちして懸命に働いていた母だったが、その身体に限界が来てしまった。体調を優先して仕事を減らした結果、もっとカツカツの生活になり、幼い著者の食事は菓子パンやコンビニ弁当ばかりになっていく。

明日食べる米がない!

 お金がないことから肉を食べられないのはもちろん、小麦粉を水で溶いて焼いたものにソースをかけて食べる日もあった。ここまでの限界貧乏飯を、子どもが日常的に食べていたと思うと胸が痛くなる。

明日食べる米がない!

 高校生でもひとり1台スマホを持つことが当たり前の時代に、著者はスマホがない青春を送ることになった。画面越しのチャットによるやり取りは、いつか大きな思い出になるだろう。しかし、そのスタートラインにすら立てなかった著者は、周りと馴染めないまま3年間をすごすことに。どれだけ自分らしく振る舞っていても、当たり前の青春が送れたらと思わなかった日はないだろう。スマホも買えないほど貧困の母子家庭は、子どもの人生に大きすぎる影響を与えてしまうのだ。

明日食べる米がない!

 著者は絵の仕事に就くことを夢見ていた。しかし、夢を叶えるために進学したくても、そんなお金はどこにもない。お金が理由で進学を諦める人も、きっとたくさんいるだろう。しかし、夢を諦めなかった著者は自分で稼いだお金で進学するために浪人し、アルバイトしながら自分で学費を稼ぐことを決める。同級生たちが大学受験のために勉強をする中、著者は高校時代に何も成し遂げていないことを後悔していた。そんなときに、ノンフィクションマンガを作ろうと筆を握って描きあげたのが本作だ。

 これから離婚を考えている人は貧困が理由で子どもに苦労させないためにも、経済的に自立することをおすすめしたい。頼れる人がなく働くことが難しい場合は、すぐに行政に相談し貧困を回避するために助けを求めてほしいと思う。著者の子ども時代からの経験から、これからの選択について考えてみてもらいたい。

文=ネゴト/ 押入れの人

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