当たりすぎてやりきれなくなります

公開日:2013/3/30

一億総ガキ社会 ― 「成熟拒否」という病

ハード : Windows/Mac/iPhone/iPad/Android/Reader 発売元 : 光文社
ジャンル:教養・人文・歴史 購入元:紀伊國屋書店Kinoppy
著者名:片田珠美 価格:616円

※最新の価格はストアでご確認ください。

「一億総~」という標語に弱いのは私だけではないはず。目立たぬよう、人の迷惑にならぬようという教育を受けた私の世代は敏感なのに違いない。その中でなんとか人と違うようでありたい、という願いを抱きつつも「一億総~」というひっくるめた表現を前にすると「あぁ私もやっぱりそうなのかも」と思ってしまう。そんなこと、ありませんか? というわけで、私が? ガキ化? モンスターペアレンツに? などと息巻いて購入したものの、あらゆる症例を読んでゆくうちに、やっぱり全然自信がなくなってしまった感が(笑)。

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精神科医が肌で感じてきた若者の変化はもちろん説得力抜群。若者は社会や親のあり方の変化から必然的に変わってくるのも当然で、確かに幼稚化がどこかで起こり始めているこの社会。それを治そうにも治せない。やりきれない気持ちになる1冊です。

引きこもりが急増している日本社会。その原因を症例を挙げながら解説してゆくなか、解決方法があまりにも大枠で幻想的なところに少々不満が残るものの、まざまざと現実を告発するという点では大成功しています。現代の若者の多くが自己愛が強く、打たれ弱く、未熟なままでいるのはほかでもなく成熟した大人が少なくなったからだと指摘している点も見事。

幸せそうな大人がいない社会だからこそ大人になりたくない子供を作り上げているという言及も、深くうなづけます。かといって、昔の頑固親父や、向こう三軒両隣、大家族で子供を守りながら育てられる社会に後戻りできるわけもなく。それではこれからどうしたらいいのか、を提示してくれるのは次作を待つことにしましょう。子を持つ親として、しみじみ考えさせられる警告本。現場の医師からの言葉に耳を傾けても決して損にはなりません。この現象の中で、自分の家族の核を見つめ直すよい機会になるかと思います。


成熟拒否は若者だけの問題ではなく、大人の間にも

子供時代の万能感を大人になるにつれどう対峙するかが重要

昔はよかった