甘く、切なく、もどかしい…夏に始まる揺れるふたりの恋物語

公開日:2013/8/24

夏の前日(1)

ハード : PC/iPhone/Android 発売元 : 講談社
ジャンル:コミック 購入元:BookLive!
著者名:吉田基已 価格:540円

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good! アフタヌーン創刊時(2009年)より連載が続いている本作は、作者のデビュー作『水と銀』の前日譚。「甘く、切なく、擬(もど)かしい、ふたりの長い夏の前日」というキャッチコピー通り、蒸し暑い夏から始まる男女関係の揺れ具合が独特の世界観で鮮やかに描かれており、きっと年の差恋愛をしたことのある人の心を打ち抜いてしまうことでしょう。

主人公の青木哲生(あおき てつお)は、日吉ヶ丘芸術大学で油絵を専攻する4年生。周囲の友人や教授に評価をされていても自信が持てず、また人付き合いがてんで不器用で、言いたいことを上手く言葉にできないもどかしさに小さな後悔を繰り返す日々を送っています。そんなある日、彼がバイト先で知り合ったのが和服に日傘をさした歩く大和撫子、藍沢晶(あいざわ あきら)。哲生が河原で作品展のための油絵を描く姿を彼女が見物しに現れるようになってから、2人の関係は「ただの知り合い」から徐々に変化していきます。哲生は晶の年上の余裕に反発しつつもいい女だと惹かれていき、ある雨の日のできごとを境に突き動かされるように肉体関係を結び恋人同士に。
そこから始まるのは幸せな恋人生活…とひと言で言い切れるものでもなく。家族との関係や自分の絵画への悩み、そして学校でたまに見かける少女へと自然に寄せられる視線など、ひとことでは表せない人間関係・男女関係が複雑に絡みあう物語の幕が上がっていくのです。

本作の見所は、なんといっても繊細なタッチで描かれる世界やキャラクターの表情。モノクロの漫画の中で黒を線で描き、ベタ塗りの影や空の濃さが際立つ世界は夏の日差しの厳しさや濃い空の色が瞼に浮かびます。また河原で絵に直向きに向き合う哲生の表情や、彼を見つめる晶の目は、モノローグも何もないのにその時彼女の心に生まれたものを読者に強く伝えてきます。この2人はどんな結末を迎えるのか…結果が描かれている『水と銀』を買って読むべきか否か、迷ってしまいます。


出会いはなんの変哲もないただの挨拶から

一心不乱に絵に向き合う哲生。河原で見かけた彼の姿に、偶然通りかかった晶の足が思わず止まります

表情だけでスイッチが入ったことがわかる晶の絶妙な表情。ここから2人の恋が始まるのです…!
(C)吉田基已/講談社