思春期の少年視点を克明に描く、「いじめ」と「おばあちゃん」のお話

小説・エッセイ

2013/9/26

おばあちゃんのあじごはん (KDPシリーズ)

ハード : iPhone/iPad/Android 発売元 : 高野裕朋
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:Kindleストア
著者名:山田宗太朗 価格:※ストアでご確認ください

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思春期の少年視点で描かれた作品が、2篇収められています。中学生のいじめを描いた短編「いつものおあそび」と、高校1年生の主人公が夏休みにおばあちゃんの家へ行く「おばあちゃんのあじごはん」です。どちらの作品も情景描写が非常に詳しく、「少年の見た世界」がリアルに描かれています。

「いつものおあそび」は、いじめられている側が、いじめる側をどのように眺めているかを克明に描いています。一人称視点で、主人公から見た周囲の情景は克明に描かれているにも関わらず、主人公自身の感情はほとんど表に出てきません。恐らく、常態化しているいじめに対し、主人公は心を閉ざして無感情な状態になっているのでしょう。そうしないと、心が壊れてしまうから。でも、いじめている側は「おあそび」感覚に過ぎないという。そういう背景を思うと、感情描写がほとんどないのに、読んでいて悲しくなってくる作品です。

「おばあちゃんのあじごはん」は、高校1年生の主人公が、夏休みに親から命令されて、渋々おばあちゃんの家に向かう話です。親からの命令を理不尽に思う少年の心や、周囲に対する少年ならではの理不尽な感情がリアルに描かれています。

主人公は15才。第2次反抗期真っ盛りです。自分はもう大人だと思い込んでおり、いちいち親の言うことに反発します。また、自転車の全速力で坂を下る行為が、他人に迷惑をかけるかもしれないなどとは露とも思わず、飛び出してきた小学生にぶつかりそうになると、自分の行為は完全に棚に上げて、相手を罵ります。周囲から見れば子供以外の何者でもないのですが、本人はそう思っていないという過渡期にありがちな感情です。そこから悲劇が生まれるわけですが、詳しくは本編をご覧ください。

なお、これは偶然ですが、恐らくこの作品世界は、私の出身地の近く(たぶん微妙に違う)だと思います。登場人物たちのしゃべる方言が、非常にリアルで懐かしくなりました。他の地域の方からすると、特におばあちゃんがしゃべっている言葉は、何を言っているかよくわからないかもしれません。ニュアンスは伝わってくると思いますが。


「いつものおあそび」は中学生のいじめの話。「いつも」とあるように、いじめは常態化しているのでしょう

洗面台に貯めた小便に放り込まれたおにぎりを食べさせられようとする主人公

「おばあちゃんのあじごはん」の主人公は、第2次反抗期真っ盛り

こういう感情は、自分がもう大人だと思い込んでいる少年にありがち

全速力で坂を下る主人公自身も、完全に自分だけの世界だけで生きていることに気づいていない

ハイライト部分を翻訳すると「よく来てくれましたね、暑いから大変だったでしょ?」