高倉健の不器用で朴訥なイメージは作りものだった? 名優の素顔に迫る

小説・エッセイ

2014/11/29

あなたに褒められたくて

ハード : 発売元 : 集英社
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 先頃亡くなられた高倉健さんのエッセイ集が電子化されていたので、早速読んでみた。やはり名優だったなあと嘆息した。不器用で朴訥なイメージは、つくられたもの。実際の健さんはすごくモダンでスマートな人だったのだ。

 ここには23本のエッセイが収められているが、最初の1本目はレナウンのCM撮りで行ったポルトガルで檀一雄を思い出して昔の家に行ってみる話。『檀流クッキング』ファンの私などそれだけで健さんがますます好きになってしまう。が、そこから先、健さんがポルトガルを描写している、その感受性が凄い。『南極物語』の撮影で行った南極と比較して何と書いているか、ここで軽々しく引用するのは勿体ないので本書に当たっていただくとして、ほかにもスペインの闘牛を観に行ったり、北極に近いところでインド人のキャンプ経営者と仲良くなったり、内蒙古で中国人ファンの行為に感動したり。かと思えば子どものころのことやお母さんの思い出も書かれ、昭和の名優の心の旅に付き合う趣きだ。

 また、とても知的で、戦時下の日本の精神状態の考察なども示唆に富んでいる。このごろなど知識人・文化人などといわれる人々にさえ同じ状態に入っているのに気づかない人も多いのだが。昭和の文化人のほうがレベルが高かったということなのだろうか、それとも、平成のいまでも一家言ある俳優さんが多い邦画界というところで生きておられたからだろうか。

 邦画界と言えば、降旗監督をはじめとする監督や撮影監督、美術さんなどスタッフの舞台裏の話を読めるのも、映画ファンにとってはうれしいことだし、映画をまた見たくなるだろう。後半は語り下ろしのようだが、前半はご自身の文章かと思える。どちらもあの口調が感じられて味わい深い。


90年に中国の内モンゴル自治区で行われた日中映画祭に招待されたときのエピソード。健さんが心動かされた中国人女性の贈り物とは…

長野県の善光寺の節分会に30年間通い続けた。ニューヨークやアフリカでのロケ中でさえ、このために戻ってきていたという

お母さんの思い出。妹さんに連れられ映画館に行くと、健さんを応援する気持ちがつい口から出ていたという。「あなたに褒められたくて」のあなたとはこのお母さんのこと