日本人の3人に1人は「痔主」さま!? 本当は怖い痔のコト…

健康・美容

2017/9/11

『ぢ 私、痔主になりました』(てらい まき/河出書房新社)

 私は以前に、肺炎で入院したことがある。微熱があり咳も出てはいたものの、市販薬で済ませて病院に行こうとは思いもしなかった。ただ、日増しに肩こりが痛みに変わってきたので鎮痛剤でも使おうかと考えていたところ、ある朝、急に息ができなくなり救急車で病院へと搬送される事態に。どうやら私は、肺を包む胸膜の炎症を肩こりと誤認していたらしい。風邪の原因の多くが200種類以上のウイルスであるのに対して、肺炎は肺炎球菌が原因であることが多く、ネットでは「症状が軽ければ風邪で、重症になると肺炎という考え方は危険だ」と忠告している医師もいるのだけれど、私のように風邪の酷くなったものが肺炎と勘違いしている人は少なくないはず。

 恥を忍んで告白すると、私が勘違いしていた病気がもう一つある。それが分かったのは、『ぢ 私、痔主になりました』(てらい まき/河出書房新社)を読んだからで、ぜひ読者諸氏に紹介したい。

 女性漫画家の作者が痔を発症したのは、中学生の頃だそうだ。ただしその時には、母親に患部を見てもらい豆くらいの大きさの「脱肛」と教わっておきながら、ネットが今ほど普及しておらず、数日後には治ったため積極的に調べなかった作者は脱肛が「痔」であることに気づかないまま成人する。

 初の脱肛から7年後に再発した作者は、ネットで調べてようやく「中の痔がでっかくなって排便のときに肛門の外に出てしまう」中痔核(いぼ痔)であることを知るのだが、肛門を他人に見せる恥ずかしさと、市販薬を使えば症状が軽減することから病院へ行くのを先延ばし。しかも今度は手軽に調べられるネットが仇となって、肛門に力を入れる体操をしたり、どくだみ茶を飲んでみたりといった民間療法を試すなどし、さらに8年を無駄に過ごしてしまう。

 私が勘違いしていたのは、その治療法。病院での痔の治療というと切除するとしか思っていなかったが、それはあくまで治療法の1つで作者が受けたのは「ゴム輪結紮(けっさつ)術」というもの。痔核の根元付近に輪ゴムをかけることにより栄養の来なくなった痔核が壊死し、ゴムと共に自然と取れるそうだ。麻酔が不要なうえすぐに帰れるというから、痔核が大きくなってこの術式が使えなくなる前に病院へ行った方が良いと思われる。あまりのあっけなさに作者は、「わたしの8年って一体なんやったんやろ」と感想を漏らしていた。

 そして初診時に肛門の奥に3つと外に1つの痔核があると診断された作者は、2つ目の治療を始めた直後に外の痔核が急激に悪化し激痛に襲われる。懲りずにネットで調べると1ヶ月くらいで治まると分かって我慢をしようとするも、明後日には婚姻届提出を控えており、そのうえ結婚記念に夫の家族と旅行の予定があって、治療を受ければ楽になることを経験済みなはずなのに旅行をやめるか病院へ行こうか迷う。意を決して病院へ行き担当医に相談すると、「え!? 明日結婚!? おめでとう! てかその旅行 絶対行かなアカンやつやん!」と説得されて、今度は切除手術を受け無事に旅行に行けることとなった。

 しかし、人間というものは喉元過ぎれば熱さ忘れる。作者は、対症療法でラクチンに過ごすうちに、最後に残った痔核の治療をしないまま半年も放置して切れ痔(裂肛)まで併発してしまうのだ。この作者、まるで成長していない……。だが作者を非難するには、私もまた同様のことが思い当たりすぎて困る。

 巻末に載っている担当医へのインタビューによれば、逆立ちをすると頭に血が上って具合が悪くなるように、お尻付近は血が集まりうっ血しやすく、二足歩行をする人間にとって痔は宿命であるらしい。程度の差こそあれ誰もが「痔主」ということならば、せめて正しい知識を身につけて、立派な痔主でありたいものだ。

文=清水銀嶺