『キャバ嬢専用手帳』に学ぶ、商品企画の極意

ビジネス

公開日:2017/9/15


 キャバクラから出てきた男性の顔は明るい。楽しい時間を過ごしたであろうことは、想像に難くない。

 不況で多少の影響はあるだろうが、キャバクラが、ITと並ぶ好況ビジネスであることは間違いない。いま、若い女性が手っ取り早く稼ぐには、最適な仕事なのかもしれない。

 だが、キャバ嬢の戦いは熾烈である。風俗のようなダークな部分がないため、参入者も多い。東京だけで数万人。全国では10万人を超えると言われる。そんな厳しい世界で、大金を稼ぐことは容易ではない。

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 客の指名を勝ち取り、目標を達成し、ナンバーワンとなるためには、相応のテクニックが必要である。「可愛い」「セクシー」だけでは、一流のキャバ嬢にはなれない。

 男性の志向・行動・心理を理解した上で、自分の価値を売り込み、客を満足させなければならない。そのためには、客の一人ひとりを知り尽くす必要がある。

 そんなキャバ嬢の“顧客管理”をサポートする会社がある。客のデータをこと細かく収集するための手帳を販売している。

『稼ぐキャバ嬢ホステス手帳』。

 スケジュールや売り上げ、指名本数などの基本項目に加え、客との会話内容や支払い方法、領収書の有無、交際程度、希望の卓番、たばこの銘柄、よく飲む酒、気の合うヘルプ&ボーイなどが、書き込めるようになっている。キャバ嬢は、客の席に行く前にこの手帳を見て、気配りを働かせるのである。

 ナンバーワンクラスになると、客のデータは頭に入っているだろうが、そんなキャバ嬢はひと握り。ほとんどのキャバ嬢は、まったくの素人からの“勉強中”なので、こうした手帳が役立つのである。

 客を質問攻めにするキャバ嬢より、自分のことをわかってくれているキャバ嬢に、男性は惹かれる。相手は仕事でやっていることがわかっていても、「もしかして俺に…?」と、男性は思いたいのである。そして、口説こうとする。

 それが、キャバクラの“遊び方”である。「今日がダメなら、また今度」と、常連になっていく。実に緻密な計算をされたビジネスモデルである。

 さりとて、男性は騙されているとは考えない。笑顔で店を後にする。客は満足し、店は儲かる。このビジネスモデルを他のビジネスにも応用すれば、日本経済も活性化し、社会も明るくなるのではないか。

 そこに目をつけた、手帳の販売会社が素晴らしい。業界を絞り込み、そこで働く女性だけに焦点を当てたのである。究極の“特化”だと言えるだろう。

 業界を知り尽くした会社だからこそ生まれた、究極の商品ではないか。

文=citrus プランナー・コピーライター 佐藤きよあき