ピンチになっても大丈夫!! 秘めたる能力──「逆境力」を開花させるコツとは?

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公開日:2017/10/6

『逆境力のコツ レジリエンスを鍛える92の言葉』(自由国民社)

 「レジリエンス」という言葉をご存じだろうか? 近年、心理学やメンタルヘルス分野を中心に、IT、経済、防災などの様々な分野でも使われ始めている言葉だ。『逆境力のコツ レジリエンスを鍛える92の言葉』(自由国民社)の著者である植西聰氏は本書の中で、「(レジリエンスは)心理学が今、注目している人間の能力」だとしてこう説明している。

「復元力」「回復力」といった意味がある言葉です。
 逆境に陥って落ち込んだり、辛い思いをしている時、そんな状況を脱するための精神的な力を意味する言葉です。

 つまり心理学でのレジリエンスとは折れない心、逆境力であり、本書はそんなレジリエンスを鍛えるためのメソッド本なのである。

 著者の植西氏は著述家にして心理・産業カウンセラー。これまでポジティブシンキング、自己啓発、成功哲学などの分野で数々の著書を執筆。本書も著者が得意とする分野の一冊で、読み進めやすく、学びやすい工夫がされている。

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 その工夫のひとつが、見開き2ページ1メソッド完結型であることだ。

 例えば最初の見開きは「辛い気持ちを人に話すことで心が『浄化』されていく」という主題と「悩みをひとりで抱えこまない」という副題がメソッドとして記されている。

 続く本文の中で著者は、心の浄化作用を心理学用語の「カタルシス効果」という言葉を使って簡単明瞭に説明する。そして、自分が置かれている状況や心境を「信頼できる人に話す」ことがカタルシス効果となって心を楽にして逆境力に繋がると説く。

 著者が特に重視するキーワードやアドバイスは太線で示され、必要な言葉だけがスムーズに残るようにも配慮されている。

 こうしたメソッド本では、いくつかのステップ設定や知識の積み重ねが求められたりもするため、読むのが億劫になることもある。しかし本書は例えるなら1話完結ドラマで、前後の脈略を気にせず気楽に読むことができる。

 また、章立てはあるものの、すべてがレジリエンスを鍛えるメソッドであるため、飛ばし読みもひとつの読み方だ。例えば、気分次第でパッと本書を開く。するとそこにいまの自分に最適なアドバイスを見つける……。そんな楽しみ方もできるだろう。

 また本書のもうひとつの特徴は、心理学用語だけでなく、古今東西の偉人、思想家、武将、文筆家などが残したレジリエンスを鍛える名言にも出会えることである。

 例えば著者は小説家の三島由紀夫のこんな言葉を紹介している。

「不安という感情自体は少しも病的ではないが、『不安を怖れる』という状態は病的である」。

 逆境に立てばだれでも不安になる。「不安を適度にとどめることができれば、それはいい意味での緊張感となり潜在能力を引き出す役に立つ」と著者は記し、こう続ける。「しかし不安を怖れてしまうと、精神面に悪影響となる」(つまりレジリエンスが育たない)。

 他にも「自分ほめノート」を書いてみる/「セルフトーク」で気持ちを前向きにする/など、心の持ち方ひとつですぐ実践できるメソッド・アドバイス満載の本書。特に、ついついネガティブになりがちなので楽観思考を高めたい、自分をもっと愛したい(自尊思考)、自分の力をもっと信じたい(自己効力思考)など、レジリエンスを育む思考力を高めたい人には最適な一冊だ。

文=町田光