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公開日:2017/10/12

『知的人生を楽しむコツ』(齋藤孝/PHP研究所)

 突然ですが、知的な人ってどんな人だと思いますか? 学歴が高い人? スマートな雰囲気のある人? 

 知性と知識は似ているようでいて、異なるものです。辞書によると、知性とは「物事を知り、考えたり判断したりする能力」とあります。一方、知識とは「ある事柄について、いろいろと知ること。その知りえた内容」です。知識は物事を知っているにとどまるので「知識があっても、知性がない」ということは十分起こりうるでしょう。

『知的人生を楽しむコツ』(齋藤孝/PHP研究所)は、日々の生活がつまらないと感じている人に一度は手に取ってもらいたい本です。この本を読むと「知的」であるとは、「自分で自分を楽しませることのできる人」だということが分かるでしょう。

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 本書では、著者の少々マニアックな視点から知性を鍛える方法がいくつも紹介されています。読書や庭仕事、映画鑑賞、スポーツ観戦、音楽鑑賞など、どれも基本的には一人でできることばかり。中でも読書は最も手軽にできる方法として紹介されています。低刺激だけど、何度繰り返しても飽きることのない「学び」を繰り返し、静かな深い感動を得ることが大切だといっています。大学教授で、読書をすることも仕事の著者は特殊かもしれませんが、一般の人にとっても参考になることは少なくないはずです。

 一人でできる行動ばかりでは、他人とうまくやっていけない。そう感じる人もいるかもしれません。著者は「人生は人間関係が良くなるとグッと楽しくなる」とも指摘しています。私たちの悩みの多くは、人間関係にまつわるものだといわれています。大人の人間関係に大切なのは、苦手な人とも敵対しない関係を作ることです。これは、いくつになってもなかなか難しいスキルです。感情が先に立ってしまって、できる人はそれほど多くはありません。年齢と対人スキルは必ずしも比例しない難しい分野ですよね。不満の多くは、勝手な期待やお互いに依存する関係から生まれています。精神的に成熟した人は、他人と自分を比べてガッカリしたり、妬ましく思ったりすることはありません。それは物事をシンプルにとらえる基準と、状況を客観視する視点があるからです。他人と良い関係を作るには応援することも一つの方法です。応援は一歩引いて見なければできないものですが、他人も自分も楽しくなれます。

 誤解を恐れずにいえば、毎日が退屈と感じるのは「知性」が足りていないから。何度もいいますがここでいう知性とは、自分の置かれた状況を客観視し適切な対応を行う能力のことです。他人と良い関係を作り、充実した毎日を過ごすにはまずは自分の好きなことは何かをよく理解しておく必要があります。

学ぶことは祝福されている

 いくつになっても新しいことを知る、知らなかった世界を知るというのは楽しいことです。小さな子どもは何でも新鮮で楽しく感じられるもの。大人になっても、その頃の気持ちを思い出して自分を楽しませてあげましょう。本書は日常生活をちょっと変えたい、新たな気づきを得たいと考えている人にとってのヒントが満載です。

文=いづつえり