「金の木」にお金は…「成る」?「生る」? 知らずに使っている間違った日本語

ライフスタイル

2017/10/17

『知らずに使っている残念な日本語あなたの言葉遣いはどこか間違っていませんか?(TJ MOOK)』(宝島社)

 日常的に使っている日本語だが、それだけ慣れ親しんだ分、使いかたがおざなりになっていないだろうか? 小生もこうして文章に携わっている上で気をつけてはいるのだが、書けば書くほど言葉で表現することの難しさを思い知らされる。そこで事あるごとに学ぶようにしているのだが、そんな折にみつけた一冊が『知らずに使っている残念な日本語あなたの言葉遣いはどこか間違っていませんか?(TJ MOOK)』(宝島社)である。

 本書では社会人として間違えてはいられない言葉遣いや慣用句、難読漢字に四字熟語を1000の具体例で解説。間違っていたり、あいまいに覚えていたりする言葉を学び直すには、実に良い一冊だ。例題はドリル形式で紹介されているので、小生は国語の授業を思い出しながら読み進めていった。

 まずは表紙にも書かれている「金の成る木」と「金の生る木」だが、どちらが正しいだろうか。正解は後者の「生る」である。実は小生も今まで「成る」だと思い込んでいたが、「成金」のイメージから混同していたのだろう。本書の解説でも「『成金』から『成る』と混同しやすい」とあり、図星を突かれてしまった。本来は「利益を生み出す源泉」の意味で、「生る」とは「結実すること」である。語源を知れば、もう忘れることはないだろう。

 このように漢字を間違えて覚えている例は実に多いようで、たとえば商売の繁忙期を「掻き入れ時」と書いてしまっていることはないだろうか。正しくは「書き入れ時」である。「帳簿に多く書き入れることに由来する」そうで、「搔き集める」のイメージから混同されやすいという。さらにいえば「折りこみ済み」も「織りこみ済み」だし、「喝を入れる」も「活を入れる」なのだ。「折りこみ」では単に折るだけで組み込むことにはならないし、「喝」は仏教における大きなしかり声なので、刺激し元気づけることはできない。

 もっとも、このような慣用句をパソコンで入力する場合には、辞書機能が正しく変換してくれるのでさほど心配はいらないかもしれない。むしろ、入力し変換された時点で、正確な書きかたを知る機会もあるだろう。ただし、どのように書くかわかった時点で意識し学ばなければすぐに忘れてしまうし、同音異義語となると自身で理解していなければならないので注意したい。特に【こうしょう】という言葉は「交渉」や「高尚」など48種にも及び、「最も多い同音異義語」と紹介されている。

 さらに、本書で特筆したいのは「敬語表現」の項目。中でもメディアにも取り上げられ、相手をかえって不快にさせかねない過剰な敬語表現、いわゆる「バイト敬語」に注目したい。本書の例文に「お会計は、3400円になります」とあるが、どう直せばよいだろうか。答えは勿論「3400円でございます」だ。そもそも「~になる」は「AからBに変化する」の意味なので、「変化しないのになぜ?」とずっと疑問を抱いていた。解説を読むと「単に【です】と同義に使われていることから不適切な表現と言える」とのことだ。

 今度は、金銭を受け取る際の例題として「5000円からお預かりいたします」とある。これもよく聞く言葉で以前から使われていると思うのだが、何がおかしいのだろうか。正しくは「5000円を」なのだ。「~から」は起点を表す言葉で、例文のように次の動作がない状況では「~から」を使う意味がない。実のところ小生は、今までただの業界用語だと思い込んでいた。だが、冷静に考えれば業界用語で接客というのも変な話で、それに気づかなかった自分が恥ずかしい。

 言葉は、日々進化を続けており、昔とはその使いかたが変わってしまったものもある。時代に合わせた言葉遣いを覚えるのも必要なのだが、連綿と受け継がれてきた美しい言葉も、また大切にしたいものだ。本書で学び直し、その適切な使用を心がけたい。

文=犬山しんのすけ