大人の性教育で解決できるか? 男の「支配したい願望」、女の「母としての責任と呪縛」

社会

更新日:2017/10/24

『誰も教えてくれない大人の性の作法』(坂爪真吾、藤見里紗/光文社)

 学校の「性教育」の授業を覚えているだろうか。いつもよりも努めて硬い表情の先生、うつむいて笑いをこらえるクラスメイト、教室内の微妙な空気…。2017年に女性ファッション情報誌『MORE』が発表した「モア・リポート2017」によると、全国の23歳から33歳の女性読者2000人にインターネットで「性とセックス」についてアンケート調査を実施したところ、セックスに関する知識を得た手段として、1位だったのは「本・雑誌」で59.8パーセント、2位が「学校の性教育」で49.4パーセント、3位が「ネット」で46.3パーセントだったという。30年前の同調査では、「学校の性教育」は5.2パーセントだったということから、学校での性教育が重視されつつあることがわかる。

『誰も教えてくれない大人の性の作法』(坂爪真吾、藤見里紗/光文社)は、「性」の問題解決に取り組む著者2人が各々、男性、女性の立場から大人の性教育の必要性を語り、私たちの生活に蔓延する「性」の問題に切り込み、導いていく。

■貧困、嫌婚、男のプライドと不倫(男子編)

 「男子編」では、成人男性を「未婚×非正規」「未婚×正規」「既婚×非正規」「既婚×正規」の4つに分けて分析し、それぞれが抱える性の問題を明らかにする。今や共働きが多数派だが、非正規で未婚の男性は「経済的に自立していなければ女性と付き合ったり、セックスをする資格がない」という「呪い」に苦しみ、非正規で既婚の場合は自分より妻の収入が高いことにストレスを感じる。一方、正規の未婚男性は経済的、時間的余裕があり、わざわざ自由が奪われる結婚を選択しない。「既婚×正規」には、不倫という落とし穴が待っている。

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■結婚、妊娠、出産、育児、仕事…コントロールできないことばかり(女子編)

 一方、「女子編」では、性教育者である著者が女性の立場から「ここだけは!」と考えるところをピックアップして、大人の女性に必要な性教育を論じる。子供の「性器いじり」の話題から、「自慰行為」改め「セルフプレジャー」の勧め、かかりつけ産婦人科医を持つことから生理の辛さを楽にする方法…そして、女性は、「妻として」「母として」という役割に囚われすぎず「性も大事に」くらいの心がけでいてほしいということを伝えている。

■「性」の誤解と呪いに対するQ&A

 性に悩める男女から寄せられた悩みに、著者ふたりが対談形式で回答している。

・彼にコンドームつけてって言えません。
・浮気・不倫を防ぐ夫婦間コミュニケーションは?
・恋愛に興味がありません。

「性」の問題を「なかったこと」にせず、悩みを受け入れ共有することが大人の性教育の一歩になるのだという。ひとつひとつの悩みに寄り添う姿勢が印象的だ。

 生き方や働き方の多様性が盛んに叫ばれる時代だが、旧来の価値観を払しょくするのはまだまだ難しい。私たち大人にできることは、そんな矛盾をはらんだ答えの出ない「性」の悩みや疑問を抱えモヤモヤしながら、自分なりの解決策を模索し続けることなのだろう。

文=銀 璃子