有吉弘行も全巻買いした『BLUE GIANT』はなぜこんなに心を揺さぶるのか? 主人公のひたむきさに涙…

アニメ・マンガ

2017/11/11

『BLUE GIANT』(石塚真一/小学館

 やりたいことがあるのに、なんとなく放置したまま。いつも継続することなく三日坊主……。皆さんにも心当たりがあるのではないでしょうか。もちろん、筆者はあります。英会話もダイエットも貯金も長続きはしませんでした。しかし、せっかく燃えかかった情熱をそのまま絶えさせていいのか? いいはずがありませんよね。そんなときは、漫画から情熱を分けてもらいましょう。さぁ、『BLUE GIANT』(石塚真一/小学館)を読むのです。

 芸人の有吉弘行氏が、全巻大人買いしたことでも話題になり、テレビなどのメディアでもたくさん紹介されてきた作品です。そのため、すでに愛読している人にとっては、「何をいまさら、大人気作品を紹介してどうするんだ」とお思いのことでしょう。お気持ちよくわかります。

 ですが、私が恐れているのは、この期に及んでまだ“『BLUE GIANT』をはじめていない人”がいるという現実なのです。もったいなすぎると思いませんか? そんな気持ちをここで爆発させてもらえないでしょうか。すでにファンだという人は、今一度感動を共有しようではありませんか。

●本当にやりたいことなら、環境や時間やお金を言い訳にしない

 『BLUE GIANT』は、世界一のジャズサックスプレーヤーを目指す一人の青年の物語です。主人公の名前は、宮本大。部活でバスケットボールに熱中していた大は、ひょんなことがきっかけでジャズに目覚め、その日以降、毎日のようにサックスの練習に打ち込むようになります。近所の川沿いで、雨の日も風の日も、休むことなくひたすら練習。楽譜が読めないので、すべて独学です。聞いた曲を吹けるようになるまで練習します。

 時間がないとか、天気がどうのこうのとかは関係ありません。淡々と練習するのみ。大の姿を見ていると、言い訳ばかりしている自分が恥ずかしくなります。やると決めたらやる。情熱の燃やし方を、大は教えてくれます。

●思い切りやって、めちゃくちゃ失敗して、一瞬反省して、立ち直る

 自主練のかいあって、メキメキとサックスの腕を上げていく大に、チャンスが訪れます。なんと、ジャズバーで吹いてみないかと、ライブの依頼がくるのです。人前ではじめて演奏することになった大は、それはそれは気合を入れて演奏します。……が、所詮は素人。演奏を聴きに来た客から、盛大にクレームをつけられ、逃げるように店を後にするのです。

 夜の公園でベンチに座り、打ちひしがれている……かと思いきや、次の瞬間にはもう立ち直ってみせます。しかし、大がどれだけライブを楽しみにしていたか、どれだけ練習を重ねたかを知っている読者には、この大きな挫折によって傷ついた大の心情がひしひしと伝わってきます。もう、応援せずにはいられないですよね。

 こうして、初ライブで大失敗した大ですが、何事もなかったかのようにまた練習に励むのです。失敗をいちいち引きずらない姿勢も、大の素晴らしいところです。

●プライドをへし折られたときに、どう感じるか

 高校を卒業し、単身東京に出てきた大は、同い年のピアニスト、雪祈(ユキノリ)と出会い、グループを組むことになります。さらに、同郷の玉田がドラムとして加わり、3人は「ジャス」というトリオで演奏を始めるようになるのです。

 3人の中でも、類まれなるセンスを持つ雪祈は、グループの中心的存在として、2人を引っ張っていきます。ピアニストとしての才能だけではなく、外交力にも長けている彼は、ジャスを大舞台に引き上げるべく戦略的に動きます。ところが、その自信が裏目に出てしまい、初対面の男性にこっぴどく説教されてしまいます。

 そのときはじめて雪祈は、自分がいかに横柄な振る舞いをしていたかということに気づくのです。そして、相手の男性に感謝します。”あえて厳しい言葉を使って、未熟な自分に気づかせてくれてありがとう”と。なんて、心が清らかで素直な、19歳なのでしょうか。

 上京編では、大だけではなく雪祈の成長も、心を揺さぶってきます。もちろん、ドラムの玉田のエピソードもアツいです。

●どんなに努力しても、すべての目標がキレイに達成されるとは限らない

 3人ではじめたジャスは、着実に実力を伸ばし、ファンを増やしていきます。そして、憧れの舞台「SO BLUE」へと近づいていくのですが……。ここで重要なのは、すべての目標がキレイに達成されるとは限らないということです。思いもよらない出来事が起こるのが世の常で、この作品もクライマックスでとんでもないことが起こります。

 3人には過酷な試練が待ち受けていますが、それぞれの考え方でクリアしていきます。ですが、目標が達成してもしなくても、彼らは何かを諦めたわけではありません。結果が出たあとは、また次のステージへと進んでいくだけです。

 夢を追いかける中で、繰り返される挫折と葛藤を前向きに描いた『BLUE GIANT』。大いなる魅力が伝わったでしょうか。伝わったらいいと思います。全10巻というコンパクトさも素晴らしいですよね。ちなみに、続編の『BLUE GIANT SUPREME』が、3巻まで発売されています。

 それにしても、音楽をテーマにした作品には名作が多いです。『のだめカンタービレ』『プライド』『四月は君の嘘』『ピアノの森』『青空エール』……。すべて同意してくださった方、ぜひ一緒に作品への思いを語り合いましょう。

文=中村未来(清談社)