日本が誇る名機「零戦」を未知なる領域に導いた技術者たちの奮闘と葛藤

小説・エッセイ

公開日:2012/2/18

零戦―その誕生と栄光の記録―

ハード : PC/iPhone/iPad 発売元 : 講談社
ジャンル:小説・エッセイ 購入元:電子文庫パブリ
著者名:堀越二郎 価格:432円

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こんにちは。この間零戦を見てその姿に圧倒された矢澤りえかです。
さて、皆様は零戦について、どのくらいご存知でしょうか。零戦は「ゼロ・ファイター」と呼ばれ外国のパイロットたちから恐れられ、戦中のみならず、戦後、そして今もなお高く評価されています。

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神秘的ともいえる強さと魅力を持った零戦―零式艦上戦闘機―を生みだした、主任設計者である堀越二郎氏が、設計過程、そして零戦が辿った運命について、設計者の視点で綴ったのが本書です。

昭和12年10月6日、海軍から交付された「十二試艦上戦闘機計画要求書」が堀越氏の手に渡りました。十二試艦上戦闘機、のちの零戦です。計画要求書には、「こちら立てればあちらが立たず」という性質である、航続力と空戦性能をともに高めるなど、当時の航空界の常識とはかけ離れた要素が列挙されていました。しかし、不可能に近い無理難題を克服するため、堀越氏は仲間たちと粉骨砕身していきます。重量の10万分の1まで徹底的に管理し、未知なる領域へ挑んでいく姿は熱く、妥協を許さない不屈の精神と、仲間の強い絆を感じました。困難が大きかっただけに、完成と、「無敵零戦」と言わしめた強大無比の活躍における喜びは、ひとしおであったと思います。

しかし次第に、マンパワーと物量の圧倒的な差、作戦上の不運等あらゆる要素が絡み合って、日本の劣勢が鮮明になってくると、零戦は特攻機として使用されるようになりました。自分が設計した零戦とともに未来ある多くの若者が出撃し、その命を散華したという事実に、堀越氏は心を痛め、その複雑な想いが悲痛なまでに伝わってきました。

兵士たちは零戦とともに戦地で戦い、そして堀越氏をはじめとした技術者たちもまた零戦とともに戦いました。零戦は、技術者たちの血の滲むような努力によって完成したものでした。本書は技術者たちの戦記といえるのではないでしょうか。零戦という世界に誇れる日本の名機を知るうえで、貴重な1冊であります!


「日本人の血が通った飛行機」ということばにすべてが凝縮されていると思います

専門的な知識がない読者が理解しやすいよう、いたるところでわかりやすいたとえがでてきます