歌えなくなったニノがさらなる進化を遂げる『覆面系ノイズ』14巻は大波乱! ようやく想いの通じ合ったニノとモモに異変が……⁉

アニメ・マンガ

2017/11/20

『覆面系ノイズ』(福山リョウコ/白泉社)

 巻を追うごとに切なさで胸が押しつぶされそうになる、バンド×青春×片恋マンガ『覆面系ノイズ』(福山リョウコ/白泉社)。最新14巻を読んだあと、この感情をなんて表現したらいいだろう、と真っ先に思い浮かんだのは、ベタだけど“狂おしいほどに愛しい”ということ。未来を見据えて、登場人物全員が震えながらも自分の足でたとうともがく姿に、涙をこらえるのが大変でした。

 突然いなくなってしまった初恋の少年・モモにいつか自分を見つけてもらうため、歌い続けてきた不器用少女・ニノと、その歌声に魅了されて彼女のために歌を作り続けてきた少年・ユズ。物語の主軸は彼らの三角関係にプラスして、ニノ&ユズが所属する「in NO hurry to shout(通称・イノハリ)」と、モモが立ち上げたライバルバンド「SILENT BLACK KITTY(通称・黒猫)」の音楽バトルだ。再会ののち紆余曲折あってついに想いを通じあわせたニノとモモ、あきらめきれない恋心を抱えたままニノを支え続けるユズ、と3人の関係にも一応の決着がついたように思えたところで、ニノが歌えなくなってしまい、あやういイノハリライブが始まったところで13巻は幕を閉じた。

 ニノが歌えなくなったのはひとえに、目的を達してしまったから。モモと再び出会うため、想いを遂げるためだけに歌い続けてきた彼女は、何年もためこんできた切望と満たされない恋心を爆発させるように歌ってきたし、他にはなにもいらないという切実さが彼女の歌声を唯一無二のものにしていた。ではいま、幸せいっぱいになってしまった彼女は、何を想って歌えばいいのか? 歌い続けるためにはいったいどうしたらいいのか?

 そんなものは自明である。だからニノは誰にも何も言えなかった。もう二度と、手に入れたものを失いたくなかったから。だけど声を聴けばモモにはわかってしまうし、モモはニノを自分のものにするのと同じくらい、彼女の歌声が存在し続けることを願っている。ニノをふたたび歌わせるため、モモのくだした決断は、今はそれしかないとわかっていても崩れ落ちそうになるくらい、つらい。だってやっと、これだけ長い時をかけて、ようやくつながりあえたのに。

 だけど泣きそうになったのは、そのせいじゃない。ニノが自分のふがいなさも全部せおいこんで、前に進もうとしているからだ。モモへの想いだけで立っていた自分をふりすてて、それがなくても歌えるくらいの強さと、誰かのために歌う力をそなえようとしている。それはプロとしての道を歩み始めたイノハリにとっても重要な覚悟だ。

 今のニノは、ひとりきりで歌い続けてきた過去とちがって、自分を支えてくれるものがモモ以外にあると知っている。モモがいなくちゃ成り立たない人生じゃだめだということもわかっている。望む未来をつかむために、内側から変わっていこうとする彼女の姿に、メンバーたちもまた感化されて、自分たちの未来をめざしはじめていく。自分を見てくれないと知っていても、できる役割を果たそうと献身的に彼女を支え続けるユズはもちろん、静かに遠く彼女を守り続けるモモ。そして、それぞれ新しい道をきりひらいていくメンバーたち。変わらない「好き」の想いを強く抱えたまま、変わり続けていく少年少女たちが、どんな進化を遂げ、どんな結論を導いていくのか。まだまだこの先も、目が離せない。

文=立花もも