クライアントはマジの「神様」。下請けデザイナーが無茶振りに応える生き物創造コメディ『天地創造デザイン部』が面白い!
公開日:2017/11/25

天地万物はすべて神自身が作り上げたーーというのは、神話ではよくある話。
月刊「モーニング・ツー」(講談社)で連載中の『天地創造デザイン部』によると、神は天地や水を造った時点で面倒になり、生き物を造るのは“下請け”に任せたという。
……今の地球上にいる生き物たちは、その下請けである「天地創造社」のデザイナーたちが案を出し、エンジニアが実現可能か検証し、クライアント(神)が採用可否を決定する、という非常にシステマチックな運営のもとで造り上げられていた、らしい。
そんな下請けデザイナーが試行錯誤で生き物を造り出すコメディ漫画『天地創造デザイン部』1巻(講談社)が、11月22日(水)に発売された。先日、原作者の一人である蛇蔵さんのツイートが話題になっていた。これで本書を知った人も多いのではないだろうか。完全に「掴みはOK」という衝撃的な導入である。
神様にムチャ振りされて動物を作るデザイナーたちの漫画。世界一ペニスの長い動物は何か、とか人生に不要な知識が手に入るよ。リプ欄で続き有 「天地創造デザイン部」案件1の1 pic.twitter.com/GxEIR7Ie8S
— 蛇蔵「天地創造デザイン部」11月発売 (@nyorozo) 2017年9月23日
蛇蔵さんとは、『決してマネしないでください。』や『日本人の知らない日本語』など、ストーリーの面白さはもちろんのこと、専門的な知識も得られる作品で有名な漫画家・原作者である。また、原作者にはもう一人、『この世 異聞』や『BARBARITIES』などの代表作をもつ、鈴木ツタさんのお名前が。
最初は「なぜ、このお二人がタッグを?」と思ったが、どうやらもともと仲の良かったお二人が、お互いの作業中に話していた妄想話を編集者に見せたのが、この漫画が生まれたキッカケだったそう。ネタは蛇蔵さん、ネームは鈴木ツタさんが担当することになり、作画は編集部内でコンペが行われ、『もうそうのアキ』のたら子さんに白羽の矢が立った。
たら子さんは、作画の担当に決まって「動物園の年間パスポートを買う口実が、やっとできました!」と語るほど、もともと生き物(特に虫)の絵を描くのがお好きだったらしい。
という計三名で、この作品は作り出されている。
物語は、クライアント(神)の無茶振りに試行錯誤するデザイナーたちを中心に描かれる。

「すっごい高いところの葉っぱが食べられる動物」という漠然とした注文に、デザイナーたちはさまざまな案を出し、それをエンジニアが実現可能かどうか検証する。一見、はちゃめちゃなコメディのように思えるが、意外と「現実世界で動けるか」という点は専門的で説得力がある(鹿の首を10メートル長くすると脳貧血になる理由など)。
どんなに良いデザインでも、動かなければ意味がないのは、ウェブサイトのデザインだけではなく、生き物のデザインでも同じことのようだ。
あまりにリアリティのある説明に、ついあの生き物たちはこうやって作られたんじゃないかと信じ込みそうになる。
また、現存の生き物だけではなく、“地球上に存在しない生き物”についても言及されるのがこの作品の面白いところだ。

ペガサスへの幻想が打ち砕かれる瞬間である。
設定の発想自体ももちろん面白いが、個性豊かなデザイナーたちや、クライアント(神)の無茶振りな依頼内容、「アルマジロって美味しいんだ……」という(役に立つかはわからない)豆知識などなど、隅々までこだわりがぎゅっと詰まった一冊で、読み応え十分。『天地創造デザイン部』は、生き物の神秘……の裏側を見たような不思議な気分になれる作品だ。
文=園田菜々
(C)蛇蔵・鈴木ツタ・たら子/講談社