些細なことですぐキレる、話に尾ひれがつく―老いた親の「あるある」から親の気持ちを考える

ライフスタイル

2017/11/24

『マンガで笑ってほっこり 老いた親のきもちがわかる本』(佐藤眞一:監修、北川なつ:イラスト/朝日新聞出版)

 「老害」という言葉が若者の間でしばしば使われるが、もしかしたら、その若者の祖父母、または親も、他者から見れば「老害」なのかもしれない。老いた親の気持ちがわかれば、いわゆる「老害」の気持ちを理解できるのではないか。

 『マンガで笑ってほっこり 老いた親のきもちがわかる本』(佐藤眞一:監修、北川なつ:イラスト/朝日新聞出版)は、「老いた親のあるある」をマンガで描き、「親の気持ちがわかる」解説文を添えた例を多数収録した一冊。

人の行為の背後には様々な理由があるものです。その理由に想いを寄せてほしいのです。

 本書は一貫して、温かいまなざしで、老いた親のあるあるを解説していく。

 人は老いると、脳の機能が低下していく。高齢者のあるあるのいくつかは、これが起因していそうだ。

 例えば、老いた親は「都合のよいことしか覚えていない」。人は、得た体験や知識は、目や耳などの感覚器官を通して脳に取り込まれる。取り込まれた情報はふるいにかけられ、残ったものだけが「海馬」に送られる。ここで一旦、「短期記憶」となって保存される。短期記憶は時間の経過で消えていくが、繰り返し思い出して記憶が強化されたり、ほかの物事と結びつけられたりすると、「長期記憶」として保存される。高齢になると、脳機能の低下でそもそも記憶力が落ちることと、短期記憶を長期記憶に変換する能力も乏しくなることから、限られた能力を自分にとってポジティブな“都合のよい”記憶に割くため、「都合のよいことしか覚えていない」事態が起こりやすいようだ。

 「何度も青春時代の話をする」というあるあるも、本書によれば、やはり脳機能が起因している。前述のとおり、人は短期記憶がほかの物事と結びつけられたりすると長期記憶となる。特に、強い感情を伴った出来事は、記憶しやすく思い出しやすい。青春時代は進学、就職、恋愛、結婚と、重要なライフイベントが集中している時期だ。これらの出来事には、強い感情を伴っている。これらの記憶は、高齢になっても容易く思い出せる。「レミニッセンス・バンプ」と呼ばれる現象だ。

 本書によると、「些細なことですぐキレる」「話に尾ひれがつく」のも、脳機能が関係している。

 人は深刻になればなるほど、他者の目には滑稽に映る。滑稽な言動をしている本人は、必死なのだ。本書は、だからこそ、自分の最も身近な存在である老いた親から、その言動の背景を理解し、温かく見守ってあげてほしいと願っている。

文=ルートつつみ