「金利・手数料は負担」でおなじみ! ジャパネット創業者・高田明氏が今だから伝えられること

ビジネス

公開日:2017/11/28

『90秒にかけた男』(高田明/日本経済新聞出版社)

 ネット全盛の時代にありながら、テレビ通販の力を強く示すジャパネットたかたの創業者・高田明氏の本が出版された。書籍に付けられたタイトルは『90秒にかけた男』(日本経済新聞出版社)。90秒という言葉には番組の尺という意味があるほか、高田氏の「今、この一瞬一瞬を全力で生きる」という哲学が込められている。

◎自社スタジオの設置は「ターニングポイント」だった

 長崎県佐世保市に本社を構えるジャパネットたかたは、今もなお自社スタジオでの収録や放送を行っている。通販会社としては異例の試みだったというが、その背景には、高田氏が「ターニングポイント」だったと振り返る時代の流れがあった。

 ジャパネットたかたが自社スタジオを設けたのは、2001年のことだ。当時はちょうどパソコンが各家庭へと爆発的に普及していく時代で、市場では各メーカーから3ヶ月に一度のペースで新製品が投入されていた。

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 外部の制作会社に発注して編集されたテープが放送局へ渡る頃には、すでに次の新製品が登場している。その間、実売価格も通販番組が追いつかないほどに値下がりすることから、放送時には適正な価格の提案も難しい。その状況で高田氏が取り組んだのが「番組制作のスピードアップ」だった。

 じつは、ジャパネットたかたの番組制作はカメラマンや編集スタッフ、出演者のすべてが自前でまかなわれている。自社スタジオからの放送当時は「制作する人材がいないことが本当の問題でした」と振り返る高田氏だが、現在は総勢100名ほどのスタッフが関わっているという。地道な「人づくり」の成果が、世の中や商品の変化に対応できるジャパネットたかたならではの強みにつながったのだ。

◎伝える技術の真髄は「序破急」にあり

 高田氏といえば、今でも頭に浮かんできそうな独特な語り口も魅力だ。現在では一線を退き、その意志は他の出演者へと受け継がれている。本書で「伝える技術」についてもふれる高田氏だが、その真髄は「序破急」にあるという。

 序破急はもともと、能の世界で世阿弥がいった言葉だ。序は会話の導入部で初めに聞き手を引きつけるための部分。そして、破で違った展開をみせ、急で結論へ導くという流れになる。もちろん、話の内容が初めから切り分けられているのであれば、順番を入れ替えて相手にさらなる驚きをもたらすということもできる。

 本書では高田氏がロボット掃除機「ルンバ」を提案する実例も紹介されている。その内容は、以下のとおりだ。

第1段階

「ルンバっていうのは丸い形で直径30センチメートルです。下の方にダストボックスがあってそしてゴミをかき出すブラシがついているから充電して電源スイッチを入れたら、あとはベッドの下でも、どこでもすっと入っていきます」

第2段階

「でもルンバはね、賢いんですよ。汚れがひどい時って、普通のクリーナーは何回も何回も皆さん、お掃除しますよね。ルンバも汚れがひどい時は1回ではないんです。1回、2回、3回と人工知能で汚れがなくなったかを判断するんです。2階でお掃除するときも、ルンバは自分で階段があるって判断して落ちないのです」

第3段階

「洗濯もお掃除もしなくてはいけないお母さん方。20歳代、30歳代の若い方は子育て大変ですよね。70、80歳代のシニアの皆さんはお掃除はロボット任せていいんじゃないですか」

 第1段階では機能の説明をして、第2段階では実際に何をしてくれるのかと別の話をする。そして、第3段階で生活の実感を味わえるような話をして締めくくるという流れだ。

 読んでいるだけでも高田氏の声が聞こえてきそうな本書では、先日、J1への昇格を果たした高田氏が社長を務めるサッカークラブ「V・ファーレン長崎」にまつわる思いも明かされている。現在は「地方から日本を元気にしていく」という人生の新たな目標を掲げて、精力的に活動されているそうだ。

文=カネコシュウヘイ