えっ「A5ランク」は美味しさを保証するものではない!?  本当に美味しい肉だけを選ぶために知っておきたいこと

食・料理

2017/12/13

『炎の牛肉教室!(講談社現代新書)』(山本謙治/講談社)

 いわゆる「肉バル」の登場や全国各地で開かれる「肉フェス」、そして、寝かせてうま味をさらに増した「熟成肉」など、昨今は、さまざまな切り口を駆使した“肉ブーム”が巻き起こっている。

 しかし、私たちはどれほど牛肉のことを知っているのだろうか。そんな疑問を投げかける書籍『炎の牛肉教室!(講談社現代新書)』(山本謙治/講談社)が刊行された。農と食のジャーナリストであり、牛のことを知るべくみずから“母牛”を所有するまでに至った著者の主張を読むと、私たちの知らなかった“牛肉の真実”にふれることができる。

◎美味しい肉の代名詞「A5ランク」の誤解と真実

 せっかく食べるなら、少しでも美味しい肉にありつきたいという思いが芽生えるのは当然。お店のメニューでよく見かける「A5ランクの牛肉」という表記は、肉のうまさを見きわめるためによく使われるフレーズだ。

 しかし、A5ランクという言葉はそもそも「美味しさを表す格付けではない」と著者はいう。このフレーズに付随するのが「最上級」という言葉だが、じつは、A5に当てはまる肉が“最上級の牛肉”であるのは正しい。

 そもそもこの格付けは日本食肉格付協会が、市場で取り引きされる牛肉の“質”を査定するために設けた規格である。その基準はいくつかあり、一つは、一頭の牛から骨・皮・内臓を取り去ったあとにどれだけの肉が残るかを表す「歩留まり」で、A・B・Cの3段階で評価される。

 そして、もう一つの基準が、肉のきめや締まりの有無、肉自体や脂の色などが総合的に判断される「肉質」で、これは5を最上の評価として5段階で評価される。

 つまり、A5ランクとは、著者いわく「肉がたくさんとれて、かつ霜降り度合いが最高レベルに高い」牛肉を指すのだ。そこには「最高に美味しい」という意味は含まれておらず、食肉関係者の集まりでは、サシの入ったA5ランクの牛肉を選ばず「食べるならA3くらいがいいよね」という言葉と共に、異なる肉に箸を伸ばす人も多いという。

◎スーパーでは「個体識別番号」を検索するべし!

 ちゃんとした専門店の料理を味わうのはハードルが高い。それでもやはり食べたいとなったとき、近くのスーパーでできる限り美味しい肉に出会いたいというのが、真っ先に思い浮かぶことだろう。

 しかし、私たちが美味しそうな牛肉に出会う方法はあるのか。その一つとして、著者は「個体識別番号」を検索するやり方をすすめている。

 日本で育つ牛は、すべて10ケタの個体識別番号で管理されている。これを調べられるのが家畜改良センターが運営する「牛の個体識別情報検索サービス」で、牛の品種や性別、出生地や生産地の異動など、詳細が分かるようになっている。

 この一頭ずつのデータには「味に関わる重要な情報が詰まっている」と主張する著者だが、例えば、性別からもその質を判断できる。一般的に、メス牛はきめ細かな肉質で深みのある味わいがあるといわれており、去勢牛の場合は、オスの性質が残っているためメス牛よりも劣るといわれる。

 また、もっとも重要なのは「出生の年月日」と「屠畜」の日付けで、一般的には、月齢が長いほど味わいが蓄積されていると考えられているため、まずは生まれてから屠畜されるまでの日付けを確認する。その後、屠畜されてから目の前で買おうとしている日付けを差し引けば、いわゆる“熟成期間”が導き出されるというわけだ。

 最後に、誤解を避けるため主張しておくが、本書の著者が目的としているのは牛肉を知ることで「もっと面白く、そして美味しく味わえるようになる」ことである。昨今の牛肉ブームに“一石を投じる”一冊でもあるが、真実を知れば、これまでとは違った魅力にたどり着けるかもしれない。

文=カネコシュウヘイ