全国的に増える空き家…どう対策すればいい?

ライフスタイル

2018/1/8

『空き家対策の処方箋』(玉木賢明/日本地域社会研究所)

 東京の下町などを歩いていると観光地で空き家を目にすることがある。新しい建物に混じってポンと立ち枯れたままになっているのは一般の住宅から店舗、そして中小工場などさまざまだ。かつては下町の景気を支えていたであろう風情を残しているものも多い。そこに住み、稼業を営んでいた人達が現在どうしているのかは知り得ないが、建物はそれぞれが何らかの事情を抱えてそこに取り残されているのだろう。

 しかし、空き家がそのままの状態で長らくあることはいくつかの問題も浮上する。景観を損ねるのもそのひとつだ。そして防犯上もよろしいとは言えない。倒壊などがあれば大きな事故にもつながりかねないだろう。だが、今や都心から地方の農村まで日本の至るところで、こうしたを問題抱えているのだ。まさに処方箋が必要である。そこで『空き家対策の処方箋』(玉木賢明/日本地域社会研究所)をみてみよう。

「空き家」と呼ばれる建物または土地には法律上の段階があるらしい。空き家を管理せず放置しておけば所有者は責任を問われるということはうっすら知ってはいるが、いくつかの段階があるとなると何かと難しそうである。空き家となっている事情には所有者が亡くなったり行方不明になったりというものも含まれる。所有者が亡くなった場合はその子どもなり親族なり相続人がいれば解決策はありそうだ。しかし、財産放棄によってそのままということも多いらしい。中には相続していながら距離や経済的な問題で解体することも管理することもできずそのままというケースもあるという。親子関係が複雑化することも珍しくない現代では、さらに深い事情もありそうである。

 しかし、場合によっては単に所有者不明では片付けられないらしい。主に都心で問題になりやすいのが借地に建てられた建物の空き家化である。地方の場合は土地も建物も同一の人間による「所有権」が多いのに対して、都心では土地を借りてそこに自己所有の建物を建てるというケースが珍しくない。土地に関しては「所有権」ではなく「借地権」なのだ。賃借された土地にある建物の所有者が不明になってしまった空き家の処遇がまた大変なのだという。

このような借地上建物が空き家となるのは、一般的に次のようなケースです。
(1)建物所有者がどこかに行ってしまい連絡が取れない
(2)建物所有者が死亡し、その相続人と連絡が取れない
(3)建物所有者が死亡したものの、その相続人がいない

 これらの問題を抱えてしまうと、土地の所有者は住民票や戸籍の附票、そして不動産登記簿謄本などを取り寄せて解決先を探っていかなければならない。本書では賃借契約の解除方法や「行方不明者」を相手取っての訴訟のやり方、そして契約解除後の手続きなど、弁護士であり空き家相談士である著者が丁寧に解説してくれているところが心強い。確かに、相手が分からないとなると、そこから先をどう進んでいいのか分からず手つかずになってしまうことは多いだろう。そして本書は空き家や土地の活用法についてもアドバイスをしてくれている。各地域の実例をあげながら、利用できる制度や申請方法など実にきめの細かい解決法に触れてくれている、まさに『空き家対策の処方箋』のタイトル通りの本だ。空き家の有効な活用法やそれにともなう制度の利用などが見込めれば、相続してしまった空き家の処遇に悩む人も解決策のヒントになるのではないだろうか。

 本書のおよそ半分は資料。国土交通省が発表した空き家に関する資料から新聞記事、そして空き家に関するさまざまな条例、法律などがぎっしり詰まっている。ネットや行政の窓口でも調べられることはあるが、個人が自分でできることは限られてくる。法律をベースに空き家問題を解決する方法から空き家の活用法まで書かれている本書を、今空き家で困っている人はぜひ役立ててほしい。

文=いしい