『魔女の宅急便』には幻のラストシーンがあった!? 鈴木プロデューサーが明かす魔女宅の裏話【ターニャの映画愛でロードSHOW!!】

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更新日:2020/5/11

■主人公キキの思春期描いたシーンとは

 鈴木プロデューサー曰く、キキの思春期が描かれているシーンとは、「……(キキが)あのパン屋へ行って次の朝早く起きてトイレへ行く。あそこですよね」観たことのないかたや思い出せない方のために補足すれば、トイレから出ようとしたキキがトイレの外に誰かが居る気配を感じてドアを閉めてまたトイレに戻るシーンです。鈴木プロデューサーはさらに、「あと一つはパン屋でつまんなそうな顔をしながらお留守番のシーン。あの2つですかね。宮さんがそう行った形で思春期を表す。なんかわかるような気がしました」と述懐しています。

「魔女の宅急便」 (C)1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

 確かに、思春期を迎えた少女なら、他人の家で借りたトイレから出る際に人の気配を感じれば少し待って行き過ぎてから外に出る、という恥じらいの気持ちを持っても理解できますよね。また若い日のバイトで店番をしていて、退屈さでボーッとした、という経験をお持ちの方も多いと思います。こうした誰もが共感できるような「思春期あるある」をさらりと作品にまぶしていくことで、少女キキの思春期がリアルに描き出され、『魔女の宅急便』は観るものをぐいぐい引き込む魅力と、忘れがたい印象を持った名作になったのだと今回改めて思い知らされたのでした。

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■幻のラストシーン、そしてラストが変更された理由とは

 『魔女の宅急便』はラストシーンが当初の予定から変更された、ということをご存知ですか? ネタバレにならないようにかいつまんで説明しますね。もともと、老婦人がキキにケーキをサプライズプレゼントしてキキが涙ぐむ……というシーンで終わるはずだったそうなのです。このシーンは名シーンとして作品にちゃんと残っていますが、実際のエンディングは違います。友だちのトンボをキキが救うべく大アクションを繰り広げる、という全く違う形でラスト部分が展開していきます。その理由と変更された知られざる経緯について、鈴木プロデューサーが次のように教えてくれました。

「魔女の宅急便」 (C)1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

「やっぱりお客さんは娯楽として映画を観に来るんですよ。そしたらサービスが必要。それで宮さんと話してあのシーンを付け加えることになる。そしたら呼び出されたんですよ、僕。メインのスタッフから。『せっかくあのシーンで終わればいい映画なのに、鈴木さん、宮さんになんでそんな提案したんだ!』って。つるし上げ食らうんですよ、僕(笑)」

 それでもひるむことなく鈴木さんはこう反論したそうです。

「……それで僕はね、苦し紛れにそういう言葉が出たんですね。『なんでもいいからそう付け足してやればいいシーンになるわけじゃないって。みんなさ、宮さんがやるんだよ! 面白くなるでしょ!』って。これがね、説得の言葉だったんですよね。そしたらみんなも何とも言えなかったんですよ」

鈴木敏夫プロデューサー

 熟練スタッフと鈴木プロデューサーとの白熱のやりとりが伝わってきますよね……。

 シーンを追加して欲しいと相談された宮崎駿監督はあっさりと了承したそうです。「宮さんっていう人は非常に面白い人でね、『あ、鈴木さんそう思う? だったら付け加えるよ!』って」笑顔でその時の様子を振り返る鈴木プロデューサーを見て、監督とプロデューサーの絶対的な信頼関係を私ターニャは感じたのでした。

「魔女の宅急便」 (C)1989 角野栄子・Studio Ghibli・N