伝えたいことが伝わらないのは、話に◯◯がないから―全く新しい切り口のビジネススキル本

ビジネス

2018/1/10

『感動力の教科書 人を動かす究極のビジネススキル』(平野秀典/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 世の中に溢れかえる「情報」。私たちはあまりに膨大な量の情報を処理できず、ほとんどスルーしているそうだ。つまり自分が、ある情報を相手に伝えたいが、相手が特に興味を持っていない場合、ただ「説明」するだけでは流されてしまう可能性も高いのである。

 人を動かすためには、「感動力」が必要なのだ。

商品や人や企業が持つ本来の価値が伝わり、人が自ら動きだす表現力――
それを私は「感動力」と名づけました。

『感動力の教科書 人を動かす究極のビジネススキル』(平野秀典/ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、脳科学や心理学、精神論を根拠にした「説得」テクニックではなく、「感動力」で相手を「動かす」新しいビジネススキルを紹介している。

 従来の「ビジネススキル本」とは、切り口が異色である本書の著者は、ビジネスマンの傍ら、演劇の舞台俳優として活躍していたそうだ。その経験から、ビジネスと「表現力」の関連に着目し、現在は感動プロデューサーとして、トヨタ自動車やパナソニックなど、大手企業を始め1000社に及ぶ会社への講演や指導を行っている。

伝えたいメッセージ、伝えたい想いがあるときは、うまい話し方をするよりも、心を込めて話せばいい。

 最も重要なのは「ハート」。あなたが顧客や同僚とのコミュニケーションに息詰まっているのなら、「うまく話そう」「相手を説得しよう」と技術ばかり駆使しているせいかもしれない。

 だが実際「心を込める」どういうことなのか。

いいことを言っていても、今ひとつ伝わらない話には、奥行き感がない。
伝わる話は、「情報」だけでなく、そこに物語という「情緒」がある。

「シクラメンのかほり」という有名な一曲がある。この曲は作詞・作曲を手掛けた小椋佳さんが妻に宛てた愛の賛歌だという。「妻に宛てた愛の賛歌」だけでは「情報」だが、このタイトルが正しい意味の「かをり(香り)」ではなく、奥様の名前にちなんだ「かほり(佳穂理)」であるところまで知れば、情報の奥行きを感じるのではないだろうか? 「ちょっと聴いてみようか」と思った方もいるはず。「心に伝わる話には、経験とイメージ、物語が醸しだすハーモニー」があるのだ。

価値が伝わる表現ができる人は、自分の価値観を相手の価値観に翻訳する表現力と共感力を磨いている。

 トップセールスは、自分の感動をお客様に伝わるように表現できる人であり、人を動かすリーダーや経営者は、自分の感動を部下に伝わるように表現できる人だという。

 どちらも「自分の感動」が『先』で、「相手の感動」が『後』なのだ。相手を感動させようと、自分が思ってもないことを、口先だけのテクニックでいくら話しても、本当の意味で人は動かない。

 リーダーの仕事は、まず自分が感動すること。それを部下や取引先に伝わるように「表現力」を磨くことが必要なのである。

 その他、具体的な「人を動かす心の技術」も紹介されているので、大いに参考にしてほしい。

 最近よく、脳科学や統計学の観点から書かれたビジネススキル本を見かける。そういったものが無駄だとは思わないが、人間である以上、大多数の傾向が誰にでも当てはまるわけではないだろう。また、付け焼刃のテクニックでは、結局長続きしないように思う。

 本書の「感動力」はそういった学問的な「頭の」テクニックの前に、根本的な「心の」技術として、ビジネスにプライベートに、ぜひ役立ててほしい。

 感動力を培うことは、あなたも、あなたの周囲も「豊か」にするだろう。

文=雨野裾