こんな神社ならいつでも行きたい! おいしい食事で参拝者をもてなす巫女の奮闘記【作ってみた】

マンガ

公開日:2018/1/12

『祟り神の食卓1』(水沢クロマル/実業之日本社)

 正月三が日に、神社へお参りに行ったという人は多いだろう。日本で最も神社が賑わう時期であり、人々はさまざまな願いを掛けたはず。しかしながら、よく考えれば別に三が日でなければ参拝してはいけないという法はない。心に秘めた願いがあれば、いつでも神社で祈願してよいのだ。そしてもし、その神社が「おいしいごはん」を振る舞ってくれるとあれば、なおさら足が向きそうである。『祟り神の食卓1』(水沢クロマル/実業之日本社)は、祟り神を祀った神社で奮闘するドジで天然な巫女の姿を描いたグルメコミックだ。

 祟り神である「ヤツカノオオヤマヌシ」を祀った四峯神社・奥の院に巫女として仕えている加持魚々子。すぐに転んだり、人の名前を覚えられなかったりと頼りないが、彼女には信念があった。それは「おいしいはいつだって正義」。その信念のもと、迷える参拝者たちにおいしい食事を振る舞って、悩みを払う手助けをするのだ。

 神社にやって来るのは魚々子のかつての同級生や、孤独を恐れる少女などさまざま。そんな参拝者たちを呼び止め、魚々子は食事を勧める。彼らに供する食事を決めるのは、神様である「ヤツカ様」の神託。魚々子たち巫女は神様の姿が見えるので、メニューをヤツカ様に相談できるのだ。ヤツカ様は態度こそ魚々子に冷たいが、どのような料理にするのかはちゃんと指示してくれる。そんな神様を魚々子は「ツンデレ」といって、とても信頼している様子。そしてヤツカ様のアドバイスのもと、参拝者に料理が振る舞われる。食べた人たちは料理によって勇気づけられ、それぞれが悩みと向き合うようになっていくのだ。

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 では本作ではどのような食事が提供されているのか。神様に供する食事は「御饌」と呼ばれ、一般的には和食をイメージするかもしれない。しかし魚々子の作る料理は和食に限らない。ヤツカ様の神託をもとに「おむすび」や「スパゲティ」など和洋問わぬ食事が並ぶのである。それゆえに作ってみたくなる料理も当然出てくるわけで、ここは魚々子になったつもりで実践してみることにした。

【あの子のためのフレンチトースト・すりおろしリンゴソース添え】


 この料理は本殿の神「フクジュヒメ様」がヤツカ様を追い出そうとして、魚々子に「グルメ勝負」を持ちかけたときに作られたもの。幼くして亡くなったというフクジュヒメ様が生前、病気のときに何が食べたかったかということを考えてたどり着いた答えがこれである。甘くて柔らかい食べ物は、弱った体には嬉しいもの。結果、グルメ勝負に勝った魚々子はヤツカ様の居場所を守ったのだ。料理の再現にあたり、本書では材料のレシピはあるが、分量が記載されていなかった。なので一般的なフレンチトーストをベースに挑戦。材料は「食パン4枚切り1枚」「牛乳100cc」「砂糖大さじ1」「卵1個」「バター適量」、リンゴソース「リンゴ1/2個」「砂糖大さじ2/3」以上である。作りかたは以下。

1.リンゴの皮をむいて芯を除き、すりおろす。
2.すりおろしたリンゴに砂糖を加え、ごく弱火で煮る。火が通り薄いキツネ色になればソースの完成。
3.パンの耳を落とし、半分に切る。
4.卵、牛乳、砂糖を混ぜた卵液にパンを浸す。
5.卵液がよくしみたら、バターを落としたフライパンで両面をこんがりと焼く。
6.皿に盛り、リンゴソースをかけて完成。

 ふわとろのフレンチトーストに甘く煮たすりおろしリンゴソースは絶妙のコンビネーション。胃にも優しく、病人にとっては最高に嬉しい料理だ。作品ではソースの砂糖は「少々」となっていたので今回は大さじ2/3にしたが、好みで調整してもよい。「おいしいはいつだって正義」の信念で、これから魚々子がどんな料理を作っていくのか要注目だ。

文=木谷誠