1000万円を超える夫の借金を肩代わり、離婚、お金の知識ゼロ…絶望的な状況からお金の専門家として活躍するまで

暮らし

2018/1/17

『誰にも頼れない女(ひと)のお金の守り方』(小山智子/秀和システム)

 信じられるのは男よりお金――この言葉に「うん、そうだそうだ!」とうなずく女性がどれくらいいるかは何とも言えないが、少なからずヒシヒシと感じる女性は多いのではなかろうか。結婚を経験した女性の中には、配偶者を得ることでなぜかお金で苦労するハメに陥った方もいるだろう。そのような経験があれば身をもって感じる言葉ではないかと思う。そしてもちろん「おひとりさま」と称される女性陣にも同様のことは言える。生きていく上で必要なのは頼れない男よりお金だ。

『誰にも頼れない女(ひと)のお金の守り方』(小山智子/秀和システム)の著者である小山智子氏自身がシングルマザーなのである。新婚10日目で夫の多額の借金が発覚するという、本来甘い筈の新婚生活もぶっ飛ぶような経験の持ち主なのだ。しかも、借金の理由はギャンブルという見事な落ちもついている。つまり、典型的なダメ男を掴んでしまったことから小山氏のお金への闘いが始まった。専業主婦でありながら、離婚までに立て替えた夫の借金はなんと1000万円! いやはや、何とももったいない。しかし、その経験が小山氏を奮い立たせ、お金への意識を変えていく。離婚して子どもを育て、宅地建物取引士やファイナンシャルプランナーを始めさまざまな資格を取得して現在に至っているのは、実にたくましい。そして強い。

 前述したが、小山氏は結婚当時は専業主婦だった。専業主婦に対するイメージは人それぞれだろうが、世間一般で考えれば「夫の収入で暮らせる女性」という印象を持つ人は多いのではなかろうか。しかし、実際の著者は違っていた。ギャンブルと借金がやめられない夫と生活を抱えてもがいていたのだ。著者のように世間的には専業主婦でありながら実際は夫に安心して頼れない女性は決して少数派ではないと思う。不況が長引く今の日本では夫に十分な収入が見込めない人は多いのではないだろうか。そして起業して成功している未婚女性や、事情を抱えて独りでいることを選択した女性も将来に向けて不安を感じてしまう場面は少なからずあるだろう。本書はそんなさまざまな女性が実践しやすいお金の守り方について書かれている。将来のお金を導き出すための方法や考え方など参考になるものは多い。月当たりに必要な金額の出し方などはやはりファイナンシャルプランナーだ、と感心する。

『誰にも頼れない女(ひと)のお金の守り方』は著者の経験に基づく記述が中心になっているせいか、シングルマザーに偏った感は否めない。経営者レベルの女性であれば既に実践しているであろう内容も見られるのは確かだ。だが、お金をかけずに隙間時間を活用して収入に結びつける考え方、そしてその方法の紹介や貯金ができた場合の上手な活用法の提案など、幅広い人に向けた内容になっていることは間違いない。そして、決して倹約だけをすすめるのではなく、豊かな生活にも目を向けて段階を上げていくという考え方には共感できる。

 不況が長過ぎたせいか、日本人は倹約こそが正義のような考え方をする人が増えている印象を個人的に持っている。しかし、本当にそうだろうか? バブル期のように無意味に価格がつり上がっていたものに対しては確かに疑問はあるが、暮らしを豊かにすること、そして楽しむことは良いことである。もちろん、それは他人に迷惑をかけたり借金をしたりということがないのが前提だ。著者も書いているが、お金の心配がないと人は心に余裕が生まれる。他人に対しても寛容になれる。そして暮らしを楽しむこともできるのだ。誰にも頼れない女性はその人なりのさまざまな事情がある。だからこそ、本書を参考にできることを始めてみると良いのではないだろうか。

文=いしい