マニアックな店舗から地下アイドル、JKリフレまで! 欲望まみれな「アキバの裏」の歩き方

エンタメ

2018/3/10

『秋葉原 裏の歩き方』(にゃるら/彩図社)

 COOL JAPANの中心地、世界中のオタクにとっての憧れの地となった秋葉原。そんなアキバの、観光地化されていない“よりディープ”な部分のみを抜粋した奇妙なガイド本(?)が、『秋葉原 裏の歩き方』(にゃるら/彩図社)だ。

 奇妙なアイテムを売るジャンクショップ、同人誌やエロゲー、レトロゲーを売る店舗やメイド喫茶など、アキバ初心者でも興味を持つであろう部分の解説もしっかりと押さえている。だが、本書の真骨頂は“よほどアレ”な人でなければ近づくことすらないであろう、まさしく「アキバの裏側」を丹念に取材していく部分にある。

 メイド喫茶の章では、個性豊かな各店舗を紹介しつつ、直接メイド喫茶従業員に取材をかけドロドロとした裏側を聞き出してみせる(「メイドにモテる条件は金or顔」「メイドは承認欲求強し」etc.)し、なにかと槍玉に挙がるJKリフレ系店舗へも体当たり取材を敢行。「アキバリフレ店の嬢は実際にオタクなのか?」と手探り状態でヲタトークを仕掛け、最終的にガンダムオタクだった嬢と新作プラモの完成度について語り合うくだりなどは、初動で「腐女子かな?」などと予断を持っていてはたどり着けなかっただろう、渾身のルポでもある。

 他にも現役アニソンDJにモテ具合を聞き込んだり、アキバの相席居酒屋でオタクでも何でもない近所のOLに出くわし凹んだり、地下アイドルの追っかけにして風俗マニアから「元アイドルの風俗嬢の見分け方」を伝授されたり。ヲタをこじらせて沖縄から上京してきたという著者のバイタリティは、本書の取材で遺憾なく発揮されている。

 一方で、なるほどオタクらしいと感じさせるのが、オタクとしていかにモテるかについて言及する部分が度々あり、またそのモテ方指南の描写にまったく信憑性がない部分だ。ナンパは第一声が大事として「俺六つ子なんだけど……」と声をかければ、といったピントの狂ったサジェスチョンは、著者の意図とは異なる読みどころでもある。秋葉原自体に風俗店はないにせよ、派遣型風俗やエログッズ、すっかりご禁制となったロリ系アイテムショップについての情報の豊富さも、なんだかんだでエロに貪欲なオタクらしさが溢れていて素晴らしい。

 メジャー化、観光地化により刻々と姿を変えている秋葉原。本書中にも、取材中に閉店していった店舗が多数登場する(年中閉店セールを行っていた有名店が実際に閉店して驚いた、といったアキバ経験者なら同意間違いなしの小ネタも)。今後も月単位で街の様相は変わり続けていくはずだ。年季の入ったオタクの中には、『電車男』(中野独人)のヒットあたりから健全化、オシャレ化していくアキバに苛立つ層もいるという。

 しかし、あくまでも健全化したのは表面だけ。アキバの裏側には、今も怪しくディープで危なげな店舗がひしめいていることは、本書を読めばわかるはずだ。人の欲望は千差万別、オタクの欲望となればなお強欲でアンモラル。しかしアキバにはそんな欲望をも満たしてくれるお店が、今もある。読めば改めてアキバの魅力を再確認できる1冊である。

文=梶原誠司