精神科ってどんなところ? いとうせいこうが主治医とのやりとりを大公開!
公開日:2018/3/28

日本の厚生労働省が3年ごとに全国の医療機関を対象に行う「患者調査」によると、うつ病を含む気分障害の患者数は、平成8年には43.3万人であったが平成20年になると104.1万人にまで増加した。これは病院に出向いた人の数なので、潜在的にはさらに多くの患者がいると推測される。うつ病による自殺者を減らすためにも、早急な対策が求められる問題のひとつだ。
「うつはこころの風邪」。そんなキャッチコピーで、うつ病は特別な病気ではなく誰でもかかる可能性があるということが啓蒙され、理解も深まりつつある。しかしまだまだ日本には「根性論」が根強く残っており、「辛い」と声を出しにくい環境であることに変わりはないだろう。
『ラブという薬』(いとうせいこう、星野概念/リトル・モア)は、定期的に精神科でカウンセリングをうけるいとうせいこう氏が、診察室での主治医とのやりとりを公開することで“精神科に行く”ことのハードルを下げようと試みたものだ。体の傷なら外科に行くのと同様に、心の傷なら精神科や心療内科にもっと気軽に通ってほしい、というメッセージを伝えようとしている。
■自分の心の扱い方を知るための方法、それがカウンセリング
けがをしたら病院へ、心が落ち込んで辛ければ精神科へ…シンプルなはずだが、弱音を吐くことは「恥」だ、という昔からの価値観が邪魔をする。うっすら辛くて「こんな気持ち、わかってほしい」と思っても、他人に説明するのはなかなか難しいものだ。精神科には客観的に患者の話を聴き、分析してくれる心のプロがいて、患者の問題解決を助けてくれるので、自分の考え方の「癖」がわかるようになり、次に同じような考えに陥ったときに「あ、これは自分の癖だ。また同じことやってる!」と気づき、ある程度のもやもやを自分で解消することが出来るようになる。自分の胸のうちをある程度自分で把握することは精神衛生上、大事なことなのだ。
■精神科医の役割とは?
精神科医が診察室ですることは、主に「傾聴」。患者の言葉に耳を傾け、ごちゃごちゃになっている考えをスッキリまとめて、分母と分子を「約分」するように整理する。そして正しい道筋を患者が“自分で”見つけられるようにしてくれるのだ。
精神科医とかカウンセラーの役割っていうのは、患者さんを治してあげることじゃなくて、その人が自分で治るのを、応援することなんです。なぜなら、その人の辛さは、究極的なことを言えば、その人にしかわからないので、こっちが治せたかどうかを判断することは難しいわけです。(中略)だから、「こういうふうに考えてみたんだけど、どうですか?」って訊くようにしていますし、患者さんが「あっ、わかりました。こういうふうにしてみます」みたいになったら、それが一番ですね。
このせちがらい世の中を生き抜くために、心に「ラブという薬」を与えてくれる、信頼できる精神科医を見つけておきたいものだ。
文=銀 璃子
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