今年は「水」について考えてみませんか? 知らなかった「水」のあれこれ

社会

2018/4/16

『水がなくなる日』(橋本淳司:著、やまぐちかおり:イラスト/産業編集センター)

 生きていくために、なくてはならない「水」。蛇口をひねると出てくるのが当たり前だと思いがちだが、世界を見渡すと、安全な飲料水の確保が難しい地域もある。今年3月には3年に1度の「世界水フォーラム」がブラジルで開催され、各国の「水」に携わる関係者による議論や展示が行われた。講演された皇太子様は、「地球規模で発生する自然の脅威に対抗するため、国際社会は結束して対処していく必要がある」ことを訴え、「水災害や干ばつ、地域の不安定化などによって最も大きく影響を受けるのは女性や子供、お年寄りやハンディキャップのある人たちなど、社会的に弱い立場にある人々です」と語っている。いま改めて「水」問題への注目が集まっている。

 そこで、この機会に「水」について考えてみたい方にオススメしたいのが、『水がなくなる日』(橋本淳司:著、やまぐちかおり:イラスト/産業編集センター)だ。著者は、“水ジャーナリスト”と“アクアスフィア・水教育研究所所長”という肩書きを持つ橋本淳司氏。1990年代にバングラデシュを訪れた時に、井戸水にヒ素が含まれていると分かっていても、その水を飲んで生活する人に出会ったことがきっかけで、「水」問題に取り組むようになった。

 本書では、そんな著者が地球上の様々な「水」問題を、イラストを交えて分かりやすく解説。世界の水事情もさることながら、私たちが日々の生活でどのくらいの水を消費しているのか、様々な視点から分析している。

■地球上の水と衛生問題

 本書によれば、地球全体の水の量を風呂桶1杯(200リットル)にたとえると、実際に使える真水は、わずかスプーン1杯(20ミリリットル)にあたるそう。地球全体の水の約2.5パーセントが真水なのだが、そのうち70パーセントは凍っていて使えないためだ。

 多くの場合、水はタダではない。特に、インフラが整っていない発展途上国では、先進国より高額だ。例えば、50リットルの水の価格が、先進国では日収の0.01パーセント程度なのに対し、途上国では50パーセントにもなることがある。水が不足するほど価格が高騰し、貧困層には買えないという負のサイクルが生じてしまうことも。

 衛生事情を考える時に水と同じくらい深刻で、水と密接に関連しているのが「トイレ」問題。トイレが不足していると、人間の排泄物が飲料水や食品を汚染し、それが下痢による疾患を引き起こす。赤ん坊の時に慢性的な下痢になると、発育不良を引き起こす。インドでは、5歳以下の子どもの5人に2人が発育不良に苦しむという現実がある。

 このトイレ問題で厄介なのは、「習慣」という壁があること。インドでは野外で排泄する習慣があり、自宅にトイレがあっても外で用を足す人が多いとか。野外排泄の方が快適、便利、健康によいと思っている人が多いようだ。下水のインフラを整えるのと同じくらい、人々に正しい知識を持ってもらうことが重要だといえる。

■食べ物も製品も、水なしでは存在しない

 普段、何気なく食べているものや、使っているものに、どのくらいの「水」が使われているか、考えたことはあるだろうか? 著者は、焼肉屋で牛肉を1キロ食べると、約67日分の水を消費したことになると指摘。水不足の時代に安い牛肉を食べるには、「人工肉」という選択肢もあると言及しているが、果たしてどうなるのだろうか。

 和食に欠かせないコメも、水と密接な関係にある。コメを育てる田んぼは地下水を育み、洪水を緩和させる効果があるのだ。残念ながら、日本人の1世帯あたりのコメ消費量は大幅に減少しているが、コメを食べることは、水と私たちの生活を守ることにもなる。

 スマートフォン(スマホ)は、いまや多くの人にとっての必須アイテムだが、スマホを作るのにも水が使われている。1台あたり、およそ910リットル。パジャマや下着代わりに着替える人も多いであろうTシャツは、1枚あたり2900リットルの水が必要。私たちの周りにある製品も、水なしでは存在できないのだ。

 どこからやって来るのか、何に使われているのか、あまり深く考えることがなく、無尽蔵にあるようなイメージを抱いてしまう「水」。本書を読むと、思いもよらないところで水が使われ、想像以上に私たちの生活に影響を及ぼしていることが分かる。

「水がなくなる日」を現実にしないために、もう一度、自分に何ができるか考えてみたい。

文=松澤友子