ブラック企業に必要なのは倫理観じゃないって本当!?——「LAVA」会長の経営戦略

ビジネス

更新日:2018/4/11

『突然ですが、社員をもっと大切にしてみてください 持続可能な経営戦略』(鷲見貴彦/夜間飛行)

「働き改革」が叫ばれる昨今。日本中のありとあらゆる「ブラック企業」の過酷な実態が、日々明らかになってきている。ブラック企業には「倫理観」が欠けている。多くの人はそう語り、また私も同じように感じる。しかし、『突然ですが、社員をもっと大切にしてみてください 持続可能な経営戦略』(鷲見貴彦/夜間飛行)という1冊では、ブラック企業問題の本質は、「倫理観」の欠如ではなく、合理性の欠如にあると語られている。

 本書の著者は、ホットヨガスタジオ「LAVA」や暗闇バイクエクササイズ「FEELCYCLE」、マンガ喫茶「ゲラゲラ」など数多くの事業を成功させた、ベンチャーバンク代表取締役会長だ。本書には、そんな著者が自らの失敗と成功の経験から導き出した、「短期的ではない、持続的な成功のための仕組み」が詰め込まれている。その気になる内容を一部ここにご紹介したい。

■ブラック企業には合理性がない

 人件費を削ったり、本人の意に沿わない働き方を強いるのは、そのビジネスを継続的に成功させていくうえで未来のない経営戦略だと著者は断言する。社員が自分の仕事に確かなやりがいを感じ、働く中で成長を遂げていくこと。ビジネスの成功とは、その結果としてもたらされるものである。そう考える著者の目には、世のブラック企業はどう映っているのだろうか。

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もちろん、私も経営者ですから、理想や思惑通りにはいかない厳しい現実があることは、承知しています。
ただ私は、社員にかけるコストを削れば削るほど、そのビジネスを持続的に成長させることが難しくなる、ということを確信しています。
なぜなら、人件費を抑えることで、働く人の不満が募ってしまえば、長期的には、働く人のモチベーションや仕事の効率はどんどん低下し、そのビジネスの生産性は下がっていくことになるからです。(53~54頁)

 もし「人件費を抑えなければ利益が出ない」のだとすれば、ビジネスモデルそのものに無理があると考えるべきだと著者はいう。

■自己犠牲をビジネスに持ち込まない

 なんとなく聞き流してしまいがちな、飛行機の離陸前の安全に関する機内アナウンス。しかしこのアナウンスの中には、ビジネスに携わる者ならば聞き逃してはならない教訓を含んだ言葉があるのだという。それは「まず自分のマスクを装着し、それから、お子様の補助をしてください」という部分だ。

「あれ?」という違和感を覚える方もいるのではないだろうか。大人と子どもであれば、子どものほうが弱いはずなのに、なぜ大人からなのだろうか?

 問題はまさにその「順序」にある。子どもよりも大人のほうが、先に酸素マスクを着けたほうがいい。その理由は、判断力と体力のある親が先に倒れてしまったら、子どもを守る人がいなくなってしまうからだ。

 これとまったく同じことが、ビジネスの世界でも言えると著者は説く。特に日本人には、「お客様に満足してもらおう」とするあまり、自分の幸せを犠牲にするような働き方をしてしまう人が多い。しかし、継続的に顧客のニーズを満たすためには、そのサービスに携わる人が満たされた気持ちで働いていることが必須条件だ。

「自分が幸せにならない限り、他人を幸せにすることはできない」。これは、全ての働く人が大切にするべき法則だと著者はいう。

 社員をやる気にさせたい経営者と、やりがいのある仕事を求める全ての人への答えが本書には詰め込まれている。この時期だからこそ読みたい1 冊だ。

文=K(稲)