子どものことを一番に考えた離婚——我が子の笑顔を絶やさないためにできること

出産・子育て

公開日:2018/4/24

『弁護士が語る我が子の笑顔を守る離婚マニュアル』(白井可菜子/啓文社書房)

 日本の年間離婚率はおよそ35%だ。1年間で3組に1組の夫婦が離婚していることになる。1970年ころの離婚率は10%前後であったから、当時からすると相当増加していることになる。統計が示すように離婚が世間的には身近になってきているが、それでも当事者たちの心にものすごい負担がのしかかっていることは変わりない。

 実際、離婚をするには単に離婚届を役所に提出すればいいわけではなく、世帯主変更届や国民健康保険の手続きなど、しなければならないことは山積みだ。とくに、子どもがいる場合にはさらに複雑になる。親権問題から、細かいところでは、学校に転校届を提出したり、子ども手当の受給口座の変更をしたり挙げればきりがない。

 本稿では、このように子どもがいる夫婦間での離婚の際に、我が子のことを一番に考えた離婚のしかたをレクチャーしている書籍、『弁護士が語る我が子の笑顔を守る離婚マニュアル』(白井可菜子/啓文社書房)を紹介したい。

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■自分のことで精いっぱいになってしまうのは「情報不足」のせい

 本書の著者、白井可菜子氏によれば、離婚をする夫婦のなかにはその話し合いの段階で、必要以上にいがみ合ったり罵り合ったりするものもいるという。それは、性格の不一致からくるものであったり、親権はどっちがとるかというものであったり、はたまた金銭的なトラブルであったりとさまざまだ。

 冷静に考えてみれば、こうした言い合いはお互いにとっても精神的な負担が募るばかりでよくないし、蚊帳の外に放り出された子どもにとっては、穏やかで安定した生活かどうかの見通しが立たないので、最も避けるべきことだという。

 このように、離婚に際して、自分のことで精いっぱいになってしまうのは、離婚についての知識や情報が不足していることにあるのだそうだ。本書には、離婚となると誰もが心配になる慰謝料や養育費についての知識や親権のない親の子どもとの面会交流に関する情報が詰まっている。婚姻・離婚についての法制度をきちんと理解すれば、お互いに冷静になり空回りすることなく協議を進めることができるようになるだろう。

■DV夫にも子どもを会わせるべきなのか?

 白井氏が実際に相談を受けることがある事例として、DVをはたらく夫にも子どもを合わせてあげるべきかどうかということがあるという。結論から言えば、極力は会わせてあげるべきなのだそう。

 たとえどんなに暴力的でひどい男だったとしても、子どもにとってはたったひとりの父親だ。母親に愛されるだけでなく父親にもまた愛されることが、子どもの発達・発育には重要だという。子どもが「お父さんに会いたい」と言っているのであれば、もちろん合わせてあげるべきだ。また、子どもが「お父さんには会いたくない」と言っていたとしても、それが本心からではなく、母親に気を遣っての言葉であれば、やはり合わせてあげるべきなのだそうだ。一緒に住んでいたころに子どもにも手を上げるような父親だったとしても、子どもが望んでいるのなら、第三者の付き添いの下での面会が望ましいという。

 もちろん、離婚前から暴力が続き、いまでも会えば暴力沙汰になりかねないというのであれば、裁判所を通して保護命令や半年間の接近禁止命令を出してもらうことも可能である。

 実はわたしの両親も離婚している。母方に引き取られたわたしは、母親や祖父母の深い愛情に恵まれて成長することができた。わたしの両親の離婚はDVが原因ではないので、母親はわたしを父親に会わせることを厭わなかった。実際、父親に自分の近況を話したり、一緒に泊りがけで旅行に行ったりすることはすごく楽しかったし、わたしの成長にポジティブな効果をもたらしたことは間違いない。父親に定期的に会わせてくれた母親にも、限られた時間の中で、ときには楽しませときには厳しく接してくれた父親にもとても感謝している。

 最終的に、父親との面会が子どものためになったかどうかを判断するのは、大人になったときの子ども自身だと、わたしは思う。子どもをおもちで離婚を考えている方には、元夫・元妻に子どもを会わせる・会わせないに限らず、本書を読んで、もう一度子どものことを考えた離婚協議をすすめてもらいたい。

文=鹿児島のH.M.