突然、配偶者に子どもを連れていかれたら… 子どもに会いたい親目線の指南書

出産・子育て

公開日:2018/5/8

『子育ては別れたあとも 改定版・子どもに会いたい親のためのハンドブック』(宗像 充/社会評論社)

 離婚をしても、子どもがいれば、子育ては続く。母親と父親の双方の愛情をしっかりと受けて育てられることは、子どもの心の豊かな発達に関わってくる。離婚に際して片方の親に引き取られた子どもは、もう片方の親にも会いたいと思っているかもしれない。そしてまた、一方の親に子どもを連れていかれ、子どもから引き離されてしまった父親・母親の中には、我が子に会いたいと思っている人も多いことだろう。

 そこで、本稿では『子育ては別れたあとも 改定版・子どもに会いたい親のためのハンドブック』(宗像 充/社会評論社)を紹介したい。本書は、離婚した親――特に子どもを引き取ることのできなかった親――の立場からの子育てをまとめたものである。

 本稿では、この書籍に即して、子どもに会えなくなったらどうすればいいのか、また、配偶者と別れた後の共同子育ての実態はどのようなものなのかを見ていこう。

advertisement

■突然、配偶者に子どもを連れていかれたらどうすればいい?

 子どもを連れていかれてからまもない場合は、裁判所にこの引き渡しと保全処分、また監督者審判をまとめて申し立てることができる。これは、早ければ早いほど効果を発揮し、数カ月経った後の申し立てだとほとんど効果がなくなってしまうのだそう。このような手続きは、裁判に発展した場合に、自身が実子誘拐の被害者であるということを主張するための根拠になるという。また、配偶者と交渉ができない場合や離婚を突きつけられた場合には、家庭裁判所に面会交流調停をお願いすることもできるのだそうだ。

 しかし、このような手続きとその効果を熟知しているという弁護士は意外にも少ない。しかも、突然実子誘拐の被害者になった場合には、どうしていいかわからなくなり、動き出すのが遅れがちだ。そこで本書は、別居親同士の自助グループに加わって情報を共有し、少なくとも状況を悪化させないための判断を積み重ねていくことが重要だと説く。

■離婚するということは子育てをする家庭が2つになるということ

 離婚とは、子どもにとっては家庭が2つになることだと、著者はいう。この考え方は、現在日本国内ではあまり受け入れられていないというが、子どもの健やかな成長のためにはこの考え方を心に留めておくことが必要不可欠なのだそうだ。

 別れたあとの配偶者に友好的な姿勢を示して「共同子育て」に協力することは、親それぞれに求められることである。だから、この「共同子育て」を実際に行うにあたって、事前に取り決めておかねばならないことを知っておく必要がある。

 著者は、その取り決め事項として5つのことを挙げている。それは、


1.時間と頻度、子どもの受け渡し方法
2.祝日や長期休暇の過ごし方
3.引っ越しや再婚する際に子どもをどうするのか
4.情報交換の仕方
5.「会う」以外での子どもとの交流の仕方

の5つである。

 これらはおおむね、欧米を中心とした各国では法制度化されている。日本では、これらに関する法制度が未発達だからこそ、弁護士や裁判所あるいは自助グループなどを活用して、しっかりと取り決める必要がある。この5つの事項について詳しく知りたい方は、本書を参照してほしい。

 本稿では、別居・離婚に際して配偶者に我が子を連れていかれたときの対処法、および離婚後に共同で我が子を育てていくために初めにするべきことを確認してきた。しかし、ここで紹介したものは、本書のうちのほんの一部でしかない。本書にはここでまとめたもの以外にも、共同子育ての前段階で発生するさまざまな問題とその解決策が紹介されている。まさに同じような状況に立たされている方にとっては救いの1冊になるかもしれない。手に取ってみることをおすすめしたい。

文=ムラカミ ハヤト