SNSで安易に儲けようとすることの危険な落とし穴! カギになるのは“時代の気分”

ビジネス

2018/5/17

『SNSで儲けようと思ってないですよね? 世の中を動かすSNSのバズり方』(福田 淳/小学館)

 インターネットはSNS(ソーシャルネットワークサービス)という強力なツールを生み出した。インターネットの黎明期からSNSに似たようなサービスは存在したが、これほどの影響力を持つようになってからまだ10年にも満たない。少し前までは新商品のキャンペーンであれば、商品紹介のWEBページを作り、キーワード検索で上位に表示されるように施策するというのがネットを介したマーケティングの手法だったが、今や検索エンジンで上位にランキングされるよりも、SNSでバズる(=話題になる)方が、市場における影響力は大きいのかもしれない。

 だが、SNSが人々の重要な情報源となるようになってからまだ日が浅いことで、そのSNSとの付き合い方に悩んでいる企業内の担当者は多いのではないだろうか。本書『SNSで儲けようと思ってないですよね? 世の中を動かすSNSのバズり方』(福田 淳/小学館)は、企業とSNSとの付き合い方を丁寧に教えてくれる1冊だ。個人としてSNSで情報を発信したいと考えている人にも大いに参考になる部分があるだろう。

■SNSは広告ツールではない。ではどうやってマーケティングに活かす?

 結論を先に言ってしまうと、「何でもかんでも、SNSさえ使えば成功するというわけではない」ということが大切だそうだ。売りたいモノ・サービスによっては、駅前でチラシをくばる方が効果的なこともある。どうすればその情報を、ターゲットのユーザーに的確に届けられるのか。そのためには、その商品に対して、どういう設計図(ブランディング)を描くのかを予め考えるべきだ。

 肝要なのは、SNSは「広告」ではなく「ブランディングのツール」であることだ。SNSを安価な広告だととらえるのは誤解であり、テレビCMにとって代わるメディアでもない。

 なお、ブランディングとは、「モノやサービス、企業」に対する共感、信頼を得ることでその価値を高めるマーケティング戦略を意味する。「広告」が一過性の戦略であるのに対して、ブランディングはユーザーや社会との接点を見つけて深める、根源的な戦略である。だから、極論を言ってしまうと、昨日今日の短期間で成果が上がらなくても良いのがSNSだ。

 その商品やサービスがどうして世の中にとって必要なのか。そのように社会との接点を考えて動く方が、目先の数字や短絡的なマーケティング施策に振り回されるよりも、成功に近づくカギとなる。

 あなたの広めたい「商品・サービス」と社会の接点は何か、SNSユーザーに共感してもらいたいことは何か、もう一度深く考えてみることから始めてみよう。

■SNSでバズるものには「条件」がある。特に重要なのは――

 また本書によると、SNSでバズるのは「本当にいいもの」だけだそうだ。話題になろうとするあまりのウソはご法度。SNSでは良くも悪くもリアルが透けて見えてしまう。ただ、いいものでありさえすればいいかといえば、そう単純ではなく、SNSに適合した見せ方やしかけ方がある。

 例えば、思わずシェアしたくなるような「ライブ感のある表現」は重要。いかに仲間同士のような「体験」をシェアできるかという心理にもつながる。

 米・ニューヨークのメトロポリタン美術館では、影響力のあるインスタグラマーを数人雇い、営業時間以外で美術館を好きに使って発信してもらうことにした。そこで彼らは仮面舞踏会を開き、自撮りやインスタ映えするライブ情報を拡散した。結果、美術館のフォロワー数が4000人から一気に35万人に増えたという。

 著者の手掛けた植物展でも、(撮影禁止が通常なのだが)特別企画として自撮り・撮影OKにしたところ、そのミュージアムの来場者は新記録になるほどの盛り上がりとなった。

「今のSNSの潮流の根底には、みんなといいことを分け合いたいという、時代の気分がある」と著者も述べている。これまでのように、都合のよいことをキレイに並べるだけでは、誰の心もつかめない。強力なツールであるSNSをうまく活用したいと願うならば、ぜひ一読をおすすめしたい。

文=高橋輝実