「スマホ育児」でアイコンタクトが不足する赤ちゃん…子どもの成長に対するネットの影響

出産・子育て

2018/6/7

『サイバー・エフェクト 子どもがネットに壊される』(メアリー・エイケン:著、小林啓倫:訳/ダイヤモンド社)

「何歳から子どもにスマホを与えるべきか?」「何歳から赤ちゃんに画面を見せても大丈夫か?」というのは、小さな子どもを持つ親なら誰しも持ったことのある疑問ではないだろうか。

 インターネット普及以降に生まれた子どもたちは、いわゆるデジタルネイティブな世代。スマホにしろタブレットにしろ、親世代であるわたしたちよりもよほど子どもたちの方が上手に使いこなすことができている。テクノロジーはわたしたちのこれまでの生活を一変させるような便利な面を持つ反面、まだその弊害はきちんと検証されていない。インターネットが子どもたちの成長や生活にどのよう影響をもたらすのか。サイバー心理学者の立場から、現段階でいえることをまとめたのが『サイバー・エフェクト 子どもがネットに壊される』(メアリー・エイケン:著、小林啓倫:訳/ダイヤモンド社)である。

 テクノロジーのリスクは子どもがまだ赤ちゃんの頃から始まっている。本書の中でもっとも印象的だったのは、1章で紹介される、著者が電車の中で見かけた若い母親と赤ちゃんの様子だ。哺乳瓶でミルクを与えながら、スマホを操り赤ちゃんの方を見ようとしない女性。アイコンタクトが不足した子どもがどうなるか。過去の動物実験の結果や動物に育てられた子どもを例にしながら、アイコンタクトをとることの重要性やデジタル機器に育児を任せることの危険性を説いていく。

 ドキッとする人は多いだろう。小さな子どもがいるだけで、トイレに行くのも大変になるというのはよく聞く話だ。外に出るのも一苦労なので、子連れにやさしい社会でなければ行動範囲は必然的に狭くなってしまう。そうした親にとって、少しの時間だけでも子どもの注意をひきつけ大人しくさせてくれるスマホはとてもありがたい存在だ。一方、スマホで常にオンラインになっているとひっきりなしに流れてくるSNSの投稿やメール、ニュースも気になる。子どもそっちのけで、メッセージの返信をしているという母親も相当いるのではないかと思う。

 日本でも近年「スマホ育児」が議論になっているが、その議論は感情的、情緒的なものにとどまっている印象だ。一方、本書では親がネットやスマホに気を取られたり、子どもが親にそれをあてがわれたりすることで、自らの意思とは関係なくそうしたものの影響を受けてしまうことを、さまざまな研究に基づいて論じている。

 デジタル機器やインターネットの直接的な影響は、子どもがある程度の年齢になり自分でコンピュータを操作できるようになったときだ。家の中にいれば、親は子どもが安全な環境にいると考える。しかし、実はそうではない。インターネットは誰にとっても平等な世界だ。誰にとっても平等であるということは、子ども向けには作られていないということを意味している。まだ判断能力が十分でない年齢にある子どもが、ネット上で悪意ある大人の誘惑を受けたらどうなるだろうか。

 新しいテクノロジーについて論じるとき、それは「善か悪か」という二元論で語られることが多い。本書のよいところは、リスクを伝えつつも私たちはテクノロジーを排除するのではなく、うまく共存するべきだという姿勢で書かれている点だ。一般的に科学者は、人々に警告を与えたり、推論で物事を述べたりすることには消極的だ。しかし著者は、研究結果がきちんとまとまるまで待っていては遅い、というスタンス。現時点で親が取りうるベストな対処方法のヒントを述べている。

 本書では実に多くのことが書かれているが、いくつになったらスマホを子どもに与えるかを悩んでいる人に、まずは自分のスマホの使い方の見直しから始めることを、おすすめしたい。

文=いづつえり