あなたは「やりがい搾取」されていませんか? 悪用される「自己実現」という詭弁

ビジネス

2018/6/8

『自己実現という罠 悪用される「内発的動機づけ」』(榎本博明/平凡社)

 皆さんは「やりがい搾取」をされていないだろうか? やりがい搾取とは、経営者が仕事と自己実現を結びつけ、「やりがい」をアピールすることで、低賃金で過重労働を強いることだ。『自己実現という罠 悪用される「内発的動機づけ」』(榎本博明/平凡社)によると、一部のあくどい経営者は「内発的動機づけ」という心理学の概念を悪用して「やりがい搾取」を行っているという。「仕事で輝こう」「夢を実現しよう」などのメッセージは、もしかしたら経営者が都合よくあなたをこき使うための詭弁かもしれないのだ。

「内発的動機づけ」とは、給料や報酬をベースとしてやる気にさせることとは違い、活動そのものの充実感やワクワク感のために行動させることである。仕事にやりがいがあることは素晴らしい。けれども、やりがいは誰にでも絶対に必要なものであろうか?

■やりがいは、必ずしも仕事だけで得るものではない

 本来、仕事に求めるものは人それぞれだ。もちろん仕事そのものに意義を感じられれば、それに越したことはない。けれども、やりがいではなく給料や安定といった条件面で選んでも良い。大切なのは「自分のなかの優先順位をはっきりさせておくこと」だと著者は言う。

 職場の雰囲気か? プライベートとの両立か? 自分が最も大事だと考えている部分が満たされているかどうかで満足度は異なる。「やりがい」に特にこだわりがなければ、周りの雰囲気に流されて無理に「やりがい」を探さなくともよい。

■あなたが「仕事に求めているもの」を整理することが大事

 著者は仕事に「好きなこと」「やりたいこと」をあえて探さなくてもよいと主張する。なぜなら、無理に探さないと見つからないようなものは、好きなことでもやりたいことでもない。好きなこと、やりたいことというのは、探さなくても自然と現れるものだ。何とかひねり出したものが、本当に好きなこと、やりたいことだというのは少し怪しい。それよりも、「やれそうな仕事」を選ぶほうが大事ではないだろうか。

「好きなことを仕事にすべき」といった発想は、人によってはただ戸惑いを与えるものになりかねない。特にまだ経験のない就活生にとっては、「やりがい」を考えるおかげで、迷うばかりで将来の方向性が定まらなかったり、就いた仕事が期待はずれだったりすることも起こるかもしれない。

 著者は「仕事で自己実現なんてしなくていい」とアドバイスする。自己実現は、何も仕事を通じて目指さなければならないわけではない。プライベートでの趣味の世界があるから、味気ない仕事生活を乗り切ることもできるという人もいて当然だ。「仕事で自己実現しなければいけない」という空気が世の中に氾濫しているが、それはもしかしたら、安い労働力を大量に確保するために、人々をきつい仕事に誘うずるい思惑が隠れているのかもしれない。

 繰り返しになるが、やりがいそのものは決して悪いことではない。しかし、あなたがやりがい以外に現在の仕事で満足している点があるのならば、無理にやりがいを探したり焦ったりする必要はないということだ。本書には、「あなたが仕事にどのような価値を求めているか」が簡単な質問でわかる全22問のチャートも収録されている。本書が、あなたが仕事で本当に求めているものを知る第一歩となるだろう。

文=ジョセート