「恋人は2人」だけど浮気じゃない。新しい恋愛・ポリアモリーを知ろう

恋愛・結婚

2018/6/24

『わたし、恋人が2人います。』(きのコ/WAVE出版)

 ポリアモリー(複数恋愛)という言葉を聞いたことはあるだろうか。タレントの叶恭子氏が自らのライフスタイルとして触れたことで記憶している方もいるかもしれない。

 恋人は2人以上。全員がその状況に合意しており、時には恋人を共有する者同士の間にシンパシーも生まれることもある新しい恋愛のスタイル。1対1の関係をベースとする従来の恋愛観からは「奔放」「異端」と捉えられがちなポリアモリーの実際を紹介するのが『わたし、恋人が2人います。』(きのコ/WAVE出版)だ。

■著者のきのコさんってどんな人?

 著者のきのコさんはメーカー勤務の30代の女性。趣味はカラオケとスポーツというごく普通のプロフィールである。ただ1点、恋人が2人いるということを除いては。長く同棲している恋人Aさんと、ステディなデート相手の恋人Bさん。当事者全員がこの関係を了解しており、AさんとBさんは交流もある。

 現在こそポリアモリーとしてポジティブに生きる著者だが、過去には、複数の相手を同時に愛する自らのことを「精神的に問題があるのでは」と責め続けてきたという。だが大学の文化人類学の講義をきっかけにポリアモリーの概念を知り、交流会で仲間と出会った際は本当に救われる思いがしたという。以来試行錯誤を繰り返しながら自らの「人の愛し方」を受け入れてきた。

■ポリアモリーと不倫の違いは?

「複数の人と同時に、それぞれが合意のうえで恋愛関係を築くライフスタイル」がポリアモリーの基本。そのため、パートナーや配偶者に秘密で交際をする浮気や不倫とは根本的に異なる。さらに著者個人としては「パートナーにウソをついたり秘密をもったりする人とは愛し方の価値観が合わないため、そのような相手とパートナーシップを持つことは難しい」とのこと。

■ポリアモリー同士は嫉妬しないの?

 ポリアモリー独特の関係性のひとつに「恋人の恋人」の存在を指す「メタモア」というものがある。

 著者も、このメタモアができたときに嫉妬の感情をもったことがあるという。だが著者の場合は、自らと恋人との絆が安定している状態で、さらにメタモアとなる人物が信頼のおける相手であればそこに嫉妬の感情は生まれないらしい。さらにはポジティブな感情である「コンバージョン」(愛する者が、自分以外のパートナーを愛していることを感じるときに生じるハッピーな感情のこと。嫉妬の対義語と位置付けられる)すら生まれたという。

 これはあくまで著者のケースだが、このようにポリアモリーであることと嫉妬の有無は状況によって多様なものとなる。

■「ねばならなさ」の呪いから、生きやすさへ

 ポリアモリーとの出会いを経て「お付き合いは1対1で」という価値観から自由になった著者。それと同時に「人間は異性を好きになるもの」「子どもは血のつながった両親が育てるもの」といった無数の「世間の常識」にも目が向くようになる。

 それらを鵜呑みにせず「どうしてそうじゃないといけないんだっけ?」と立ち止まって考え、理不尽な「ねばならなさ」をアンインストールしていくことが、すべての人にとっても自分らしさや生きやすさにつながっていくのではと提言する。

 ポリアモリーに限らず、LGBT、パンセクシャル…と多様な恋愛のあり方が提示される現代。従来の恋愛観になじみの深い人からは、新しい関係性に違和感があるという意見も当然あってよいと思う。私個人でいうと、これまで1対1という恋愛スタイル(モノガミーという)だけが「普通」と思っていたが、これも多様な人間関係の一形態に過ぎないのかもしれないという印象に変わった。

 共感、違和感を含めてさまざまな価値観を知るということ。他者や自己理解のための視野を広げてくれる1冊だ。

文=桜倉麻子