我が子の身体的性別と性自認が一致しないと分かったら? 子どものために親ができること

出産・子育て

2018/6/23

『子どもの性同一性障害に向き合う』(西野明樹/日東書院本社)

 最近よく耳にするようになり、広辞苑(第7版)にも掲載されたLGBTという言葉。Lはレズビアン、Gはゲイ、Bはバイセクシュアル、Tはトランスジェンダーをそれぞれ指すものだ。だがはたして性的な少数派だからといって、それぞれ違った苦悩をもつにもかかわらず、こうしてひとくくりにしてしまってよいものなのだろうか。この点についてはこれから社会全体でよく考えられていくべきだろう。

 ただひとつ共通して言えるのが、多くの性的少数派の方々が子どものころから「性」について何らかの違和感を覚えながら、悩みに悩みぬいて日々の生活を送られているということだ。ときには周囲の子どもたちから、意図的かどうかにかかわらず、心無い言葉を投げかけられたこともあったかもしれない。家族からまったく理解を示してもらえなかったこともあったかもしれない。

 そこで本稿では、性同一性障害かもしれないという子どもの成長を適切に見守っていくためにわたしたちができることについて『子どもの性同一性障害に向き合う』(西野明樹/日東書院本社)に即して考えていきたい。本書の著者である西野氏は自身の身体的性別と性自認が異なる性同一性障害の当事者である。当事者の言葉に触れることでより性同一性障害に対する理解が深まるのではないだろうか。

■性同一性障害とは——性別二元論にとらわれずに考えてみる

 本書によれば性同一性障害とは、身体的性別に対する拒否感・嫌悪感があり、身体的性別とは異なる性自認に沿った性別になりたいと願うというふたつの方向性から説明されることが多いという。

 ここで重要になるのが、「身体的性別とは異なる性自認」は必ずしも体の性の逆の性を指すとは限らないということである。たとえば、女性の体をもって生まれた性同一性障害の方の性自認が必ずしも男性であるとは限らないということだ。もし性別二元論にとらわれ続けるのなら、性同一性障害についての真の理解も寄り添いもありえないのである。

 そして、子どもの性同一性障害について考えるときに大切になってくるのが、「第二次性徴」である。これは思春期のころからあらわれはじめる性器以外の性的特徴のことを指す。たとえば、身体的性別が男性なら声変わりなどが、また身体的性別が女性なら乳腺の発達などが挙げられる。身体的性別と性自認が異なる子どもたちはこのころから、自分の性についての違和感が強くなってくるという。

 それでは、この時期にある性同一性障害の子どもをもつ親がどのようにその子どもに接していけばよいのかを考えていこう。

■身体的性別と性自認が異なることのカミングアウトを受けるまで

 性同一性障害と思われる子どもをもつ親がカミングアウトを受けるまでにできることは、そのための下地作りをきちんとしておくことだ。この際、決してカミングアウトを強要してはならない。

 身体的性別と性自認が異なる子どもはこれから自分自身のことを相手に伝えていくことをたくさんしていかなくてはならない。その練習のためにも、できる限り本人が自身のタイミングで、本人なりの言葉を使って話せるような下地作りを行っていかなければならないのである。

 その際に、「女の子(男の子)らしく」といった性別によって人を判断するような言葉を使わないように心がけることが大切である。また、セクシュアルマイノリティの当事者がテレビ番組や新聞などで取り上げられているときに、そういった当事者に対して肯定的な意見をそれとなく述べてみるのも効果的だという。そして、親に言いにくい相談事などがあれば、周囲の信頼できる大人に打ち明けられるように日ごろから言葉をかけるといった行動も、今後本人がカミングアウトしやすい環境を作るためのカギとなる。

 身近に、セクシュアルマイノリティの人がいなくても、いつ出会うかは前もってわかることではない。だから、このようにして書籍から知識を得、自分の身近にもありえることだという意識をもつことがなおさら重要であるように感じた。

 多様性がますます重要視されるこれからの社会で、本書がすべての人の心地よい生活を支えるものとなってくれることを願う。

文=ムラカミ ハヤト