大好きなあの色の名前は何? オールカラーで楽しむ、身の周りの「色」を知る辞典
公開日:2018/6/30
あか、あお、きいろ…。
うまれて初めて見た色って何色だったんだろう。子供の頃は、たった12色のクレヨンで小さな画用紙の上に、自分の世界を自分の好きな色で彩っていた。今はその頃とはくらべものにならないくらい、私たちの身の周りはたくさんの色であふれている。その色ひとつひとつに歴史的背景があり、名前がついていることをご存じだろうか。
『色の辞典』(新井美樹/雷鳥社)は、グラフィックデザイナーであり、水彩画家でもある著者が、2001年から調べ始めた色の名前の由来や色合いを、途中中断しながらもライフワークとしてまとめあげた集大成だ。全367色を、「赤」、「黄」、「緑」、「青」、「紫」、「茶」、「黒・白」の7つの章に分類してその色の歴史、由来と色見本を、キュートなイラストと共にやさしく解説している。
■人の数だけ「色」も存在する
人間が見分けられる色の限界は100万色だそうだが、色に対する感じ方や見え方は人それぞれだ。「赤」は、日本語のみならず多くの言語において最古の色名であり、ひとくちに「赤」といっても色はひとつじゃない。血のような赤、りんごの赤、郵便ポストの赤、大好きなワンピースの赤…誰もがみんな、その人だけの「赤」を持っている。
色は何かを象徴する意味合いも強く、「赤」は、興奮、陽、熱、革命、愛、肉欲などをあらわす色でもある。「ローズレッド」、「ワインレッド」など、その色を特定するものの名前がそのままついているものもあれば、「フェラーリレッド」などイタリアの自動車メーカーのコーポレートカラーとなっているものもあり、「ティツィアーノレッド」のようにその色を好んで用いた画家の名前を冠したものなど、多くの人が共通して思い浮かべる特徴的なイメージカラーの名前もある。
■環境が「色」に対するイメージを作る
本書には、ひとつひとつの色の解説とは別に、各章末にその色のコラムのページが設けられている。「緑」のコラムでは、色に対するイメージは環境に大きく左右されるということがわかる。私たちが当たり前と考えていることが他の国、地域では当たり前ではないことも多い。
緑色は植物に結びつけて考えられ、「新鮮さ」「若さ」「成長」「再生」などのイメージを持つ色である。(中略)
こうした緑色への感性は、季節の移ろいがある北半球の北回帰線以北の地域に限られたものだといわれる。年間通して緑の植物が生い茂る常夏の国では、緑色に特別な感情を抱かないというのだ。(中略)
荒涼とした乾燥地域においては、緑色に対しての感情は大きく異なる。緑色は砂漠のオアシスであり、絶対的に肯定するべき「生命の源」だ。
コンパクトサイズだが内容充実の本書。スタイリッシュな装丁で、大人の読む絵本ともいえる。ちょっと気になる人へのプレゼントにも最適だ。
今日のあなたの気分は何色だろうか。
文=銀 璃子
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