“待ちきれない!”と、特報動画は異例の再生回数 村山由佳の衝撃作『ダブル・ファンタジー』 WOWOWで6月16日(土)放送スタート!

文芸・カルチャー

更新日:2018/7/3

 情報解禁で公開されるやいなや、驚異的なスピードで再生され続けている特報動画。“映像化不可能”と言われていた『ダブル・ファンタジー』のドラマ化作品がついにベールを脱ぐ。あの過激な性愛シーンをどのように表現したのか、インモラルなテーマをどう描いたのか……第1話は無料放送! WOWOWならではの挑戦が光る、官能の世界を堪能してほしい。

「どこからが人間を深く掘り下げることになり、どこからが、ただの官能、ポルノになってしまうのか。この小説を書いているとき、ずっとそのことについて考えてきました」

 みずからの殻を破るように執筆した自身初の官能小説『ダブル・ファンタジー』。性愛を突き詰めていった描写には、そうした逡巡があったと、村山由佳さんは語っている。

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「初めてお会いしたとき、御法川監督はこうおっしゃったんです。“裸をいくら衝撃的に出しても視聴者はすぐ慣れる。その衝撃度で勝負するのではないエロス、内面が現れる性愛のシーンを描くのが肝である”と。そこに問題意識を持ってくださっている監督の姿勢は、原作者にとって本当に安心できるものでした」

 地上波では映像化困難と言われた物語。そう捉えられてきたのは、ストーリーのなかに数多登場する過激なシーンだけに限ったことではない。文芸とエロス、そこにある境界線をエンターテインメントとして、どう捉え、描いていくのか。『連続ドラマW ダブル・ファンタジー』は、その根源的な部分を熟考することからドラマづくりをスタートさせ、それを見事に昇華させた逸作である。

 夫からの束縛に苦しむ主人公、脚本家の高遠奈津。その抑圧からみずからを開放するように重ねていく様々な男たちとの恋愛。性欲に忠実に、女であることに貪欲に生きる奈津が得るもの、失うもの、到達していく世界を体現しているのは、奈津同様、今年、35歳を迎える水川あさみ。クールビューティーの代名詞とも言える彼女が、ひるむことなく演じている官能シーンは、ある種、文学的とも言えるような、微妙な心理、女の性欲を映し出す、繊細なエロスを放っている。

 だが、エロスが抽出されていくのは、セックスシーンそのものだけではない。たとえば、村上弘明演じる演出家・志澤一狼太とのメールのやりとり――夫に隠れ、PCに向かって文字を打ち込んでいく奈津の表情や姿は、ある意味、“行為”よりもエロティックだ。そうした場面からは“上質なエロスの表現とは?”ということを徹底的に追及した、つくり手の気迫が伝わってくる。

 奈津を取り巻く俳優陣からも目が離せない。眞島秀和が滲ませる、夫・省吾の身勝手さ、情けなさ、村上弘明がオーラ全開で挑んだ、カリスマ演出家・志澤一狼太の魔王のような強さ、不遜さ、田中圭がやわらかに表現する、奈津に想いを寄せる大学時代の先輩・岩井の弱さ、男の可愛らしさ……。

 原作の持つ色合い、テーマはそのままに、だが村山由佳の他作品も読んでいる人なら、“あの小説も組み込まれているなんて!”と気付くであろう、大きなサプライズとなる、ドラマ作品ならではの展開からも目が離せない。6月16日(土)からスタートする第1回は無料放送。今夏、間違いなく話題となる『ダブル・ファンタジー』の世界へと、一歩踏み込んでみてほしい。

連続ドラマW ダブル・ファンタジー』(全5話)
原作/村山由佳(『ダブル・ファンタジー』文春文庫_刊) 監督/御法川修 脚本/阿相クミコ/御法川修 出演/水川あさみ、田中_圭、眞島秀和、栁_俊太郎、篠原ゆき子、多岐川裕美、村上弘明、マキタスポーツ、おかやまはじめ、池田良、粟島瑞丸、長野里美 
6月16日(土)より、毎週土曜22:00~WOWOWプライムで放送(※第一話無料放送)

 夫の態度に戸惑う日々を送る35歳の人気脚本家・高遠奈津。だが年上の演出家・志澤との情事を機に女としての人生に目覚めていく。包み込むような優しさで抱く男、圧倒的な強さで攻めてくる男……。数々の性愛の中で彼女に降ってきたものとは?第4回中央公論文芸賞、第16回島清恋愛文学賞、第22回柴田錬三郎賞と文学賞をトリプル受賞、68万部突破の話題作が、刊行から9年を経てついにドラマ化。社会的な常識より己の欲望を貫く主人公・奈津を水川あさみが体現。官能のなか束縛から解放されていく心が映像美のなかに浮かびあがる。

文=河村道子