挙党一致、リベラルってどういう意味? 曖昧模糊な霞が関文学の読み解き方

社会

2018/7/17

『不思議の国会・政界用語ノート 曖昧模糊で日本が動く』(秋山順子/さくら舎)

 国会でモリカケ問題が勃発して早一年が過ぎた。現在でも与党野党の間で「言った」「言わない」の水掛け論を繰り返して解決の目途が立たない。この件に限らず、国会中継を見ていても「前向き」「検討」など、政治家の口弁は曖昧模糊として要領を得ず、誰を信じていいのか悩ましい。

 そんな現代政治を読み解く助けになるかも知れない。『不思議の国会・政界用語ノート 曖昧模糊で日本が動く』(秋山順子/さくら舎)は、朝日新聞で20年の政治取材を続けたベテラン記者がまとめた政治用語の解説書だ。いかようにも文意をくみ取れる表現を駆使し、俗に「霞が関文学」とも揶揄される政治家の口弁は、政治記者にとっても悩みのタネだという。

 そもそも政治家の口弁は、どうして曖昧なのか。かつての首相、竹下登氏は「言語明瞭、意味不明瞭」を自認していたという。そこには「ずばり言うと人を傷つけることがある。そうなると修復に時間がかかる。多少、意味がぼんやりしていても、そちらの方が合理的(読売新聞1988年11月1日付)」という意図があったそうだ。曖昧な言葉を活用することで人間関係に波風を立てず、党内の結束を図っていた背景があるのだ。

 例えば、「挙党一致」という言葉がある。2000年7月からの第二次森内閣の頃、自民党の山崎拓氏が連呼していた。「我々は小渕前総理とは総裁選で争った禍根もあるが、ここは党としてまとまるべきであり、新しい組閣では我々の派閥からも大臣を選んでほしい」というメッセージが込められていた。

 一方で、安倍晋三首相のようなリーダー格が「挙党一致」と言ったならば、「党員個人では不満もあると思うが、反発せず党の決定に従うべきである」といったニュアンスになる。どういう立場の誰が言ったかで意味合いが変わるのだ。

 政治家の言葉が何をさしているかを分析、解釈、通訳するのが政治記者の仕事だという。ときには発言の真意を確かめるため夜討ち朝駆けで取材対象の家に突撃取材をしたり、密会が行われるホテルや料亭の前に深夜まで張り込んだり、のらりくらりと追及を躱す政治家と駆け引きを繰り広げる苦労の多い仕事だ。

 そんな著者でも頭を悩ませるのが「リベラル」という言葉だ。もともとは「個人の自由、多様性、寛容、革新」を指し示す。その対立概念は「保守」だが、最近ではこの二つは対立しなくなっているという。

 立憲民主党の枝野幸男代表は「多様性」を掲げつつも所得の再分配を重視し、集団的自衛権の行使に反対、憲法改正にも慎重だ。一方、安倍政権は保守サイドであるはずだが、憲法改正や働き方改革を次々に打ち出している。かつて希望の党の代表だった小池百合子は「寛容な改革保守政党を目指す」と矛盾するような目標を掲げている。これではベテラン政治記者であっても戸惑うのは仕方ないだろう。

 まさに言動不一致、玉虫色ここに極まれり。しかし、曖昧な話術が得意な政治家ばかりを選挙で選んでしまう私たち国民にも責任がある。本書を参考にこれからは新聞の政治面にも興味を持って、政治家に惑わされないようにしていきたい。

文=愛咲優詩