いつ死んでも大丈夫? 財産は? 連絡は? SNS削除は? おひとりさま用「終活説明書」

暮らし

公開日:2018/7/18

『おひとりさまの死後事務委任』(島田雄左、吉村信一/税務経理協会)

「終活」が重要だ、という話をしたい。実は友人で「終活アドバイザー」になった40代の女性がいる。この資格は「人生の終わりへの多岐にわたる準備、総合的なライフプラン設計をサポートできる」というもの。ただ彼女は資格を生かし働くというより、自分の知識のために取得したそうだ。まず自分が独身のまま最期を迎える時を考え、また離れて暮らす両親のことも考えるようになった。親は父母どちらかが先に亡くなると、残された方は(彼女と一緒に暮らせない以上)やはりひとりきりになる。

 3世代以上で暮らすというケースは減少し、核家族化、さらに世代間の考え方のギャップも広がっている。独身者、子供のいない夫婦、いつかひとりになるだろう家族がいる人、皆この「おひとりさま終活」については考えざるをえない。本稿でおすすめしたいのは『おひとりさまの死後事務委任』(島田雄左、吉村信一/税務経理協会)だ。

■多様化する価値観、制度はいまだ整備不足…おひとりさま終活はどうするべき?

 本書ではひとりで最期の時を迎えるかもしれないその時のために、誰もが知りたい! と思うことがしっかりと書かれている。「おひとりさまの相続財産はどうなる?」「他の家族に内緒で葬儀はできないの?」「どんな人が遺言書を書いておくべきか」「フェイスブックアカウント削除の実態」など読みたくなるトピックが並ぶ。

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 最も重要な部分は、おひとりさま終活で活用すべき「5つの制度」だ。それが「成年後見」「身元引受・身元保証」「遺言」「信託」そして本書のタイトルにもなっている「死後事務委任」。これらの中から自分や家族が合う制度を活用すればよい。これらの制度と提供されるサービスが、ひとつひとつ丁寧に書かれている。

■生前のサポートから遺言執行まで行う死後事務委任制度

 近年依頼が増加しているのが「死後事務委任制度(契約)」である。この制度は生前の日常生活をサポートし、亡くなると各種手続きに葬儀、そして財産処分・分配を行う遺言執行を開始する。

 その具体的な業務は多岐にわたる。役所での諸手続き(死亡届、保険証・マイナンバーカード、免許証、パスポートなどの返却)、葬儀と埋葬、遺品整理(家の片付け)、各種契約の解約・清算、遺産相続手続き、メールサービス・SNSアカウントの削除…。

 これだけのことを行う受任者は資格に制限がない。しかし本書にも書いてあるが、信用度が高く法的な問題にも配慮できる弁護士・司法書士・行政書士などに依頼するべきだろう。

■終活の計画は時間をかけて、じっくりと

 この書籍を書いたひとり、行政書士の吉村信一氏に話を聞いたところ、この数年、日本全国で多くの死後事務委任契約を結んだという。その相手は40代、50代と比較的若い人が多いそうだ。しかもそのうち半分近くは女性だとか。

 日本は年齢、性別にかかわらず終活の意識が高まってきているのだろう。書影は老人のイメージだが、若い人も知っておくべき内容であるし、自分の家族がおひとりさま終活をせざるをえない状況であれば、そのための知識を得ておいて損はない。間違いなく、早ければ早いだけいい。

 吉村氏が死後事務委任契約を結ぶようになったきっかけは、余命宣告を受けた末期癌の患者Aさんだった。打ち合わせから遺言書と死後事務委任契約書を完成させるまでに僅か1ヶ月半。そして契約から半年後、Aさんは帰らぬ人となった。全ての手続きが完了するまでにそれから約半年かかることになる。この時わかったことが短い準備期間ではヒアリングしきれない項目や、受任者が把握していない問題が亡くなった後に発覚することもあるということ。つまり死後事務委任契約は数ヶ月程度の時間をかけて、じっくりと計画を立てるべきで、終活について考えたなら、ぜひ少しでも早めに行動することを検討してほしいということだ。

 また本書には実際に「死後事務委任を設計するための質問項目や確認事項」がまとめてある。これらをあらかじめ考えておけば、専門家へ相談する時にスムーズに話ができる。最期を考えることはネガティブなことではない。自分と周囲に等しく訪れるその機会に、あわてないため、本書を一読することをおすすめしたい。

文=古林恭