国民病となった「がん」はいつからあったのか?予防・早期発見するために知っておきたいこと

健康・美容

2018/7/18

『「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療まで(ブルーバックス)』(国立がん研究センター研究所/講談社)

 日本人の「国民病」とも言われる「がん」。死因の第1位であり、2人に1人が罹患し、3人に1人が、がんによって命を落としている 。早期発見で治るケースも増えているが、再発の可能性は拭いきれない。身近な人ががんに罹患したと聞けば、他人事ではないと感じ、「いつか自分も…」と不安な気持ちになる。検診を受けるのも怖くて躊躇してしまうかもしれない。

 しかし、『「がん」はなぜできるのか そのメカニズムからゲノム医療まで(ブルーバックス)』(国立がん研究センター研究所/講談社)を読むと、医療技術が私たちの想像を遥かに超えて進歩していることが分かる。がんという病気のメカニズムの解明が進み、予防や治療の選択肢は格段に増えている。本書によれば、がんを知ることで「がんの予防・早期発見」「がんの効果的な治療」「がんと共生すること」が可能になるそうだ。

■「がん」はいつからあったのか?

 いまや日本人の死因第1位となったがんだが、最初にその痕跡が見られたのは、4200年前のエジプト人女性のミイラ。このミイラの骨から乳がんの証拠が発見された。さらに、エジプトで発見された2250年前の男性のミイラには、前立腺がんが骨に転移した痕跡が多数確認されている。

 がんの記録の歴史は、さらに時代を遡る。現在の「がん」に相当する言葉が医学書に登場したのは、なんと紀元前400年頃。古代ギリシャの医学者ヒポクラテスが、ギリシャ語で「カニ」を意味する「カルキノス」という言葉を使い、がんについて記載した。しかし、それ以前にも、紀元前2600年頃には、古代エジプトの医師が乳がんだと思われる記述を残しているそう。人類は、これほど長きにわたりがんと闘ってきたというわけだ。

■カギは「遺伝子(ゲノム)」

 がんについて考える時に、カギとなるのは「遺伝子(ゲノム)」。理由は様々だが、遺伝子に傷がつき蓄積されると、その細胞が無制限に増殖し、がんが発生すると考えられている。最近の研究で、がんの成長過程で遺伝子の異常が変化していくことが明らかになり、これは「がんゲノム進化」と呼ばれる。遺伝子解析技術の進歩に伴い、個々のがんで発生しているゲノム異常やゲノム進化が解明され、「がんゲノム医療」の実現につながっているという。

 遺伝子解析の技術が飛躍的な進歩を遂げているいま、がんは「原因遺伝子」に基づいて分類すべきであると本書は指摘する。というのも、例えば同じ「肺腺がん」でも、原因となる遺伝子は同一とは限らないのだ。これまで、がんの分類では肺がんや胃がんなど、がんが発生した臓器の名前がつけられてきた。加えて、腺がん、大細胞がんなど、細胞の形態や組織型で分類されている。原因遺伝子でがんを分類するようになれば、発生した臓器には関係なく、原因遺伝子ごとに効果的な治療薬を選択できるようになる。

 がんに罹患してしまったら治療が必要だが、もちろん、一番大切なのは予防。本書では予防法として「禁煙」「節酒」「食生活」「身体活動」「適正体重の維持」の5つを挙げている。これを守ればがんのリスクが半減するというデータも示されているので、ぜひ参考にしていただきたい。とはいえ、2人に1人が罹患する病気なので、その時のために正しい知識は身につけておきたい。本書の冒頭でも強調されているが、がんは不治の病ではない。それを理解するためには、がんのメカニズムや治療法を正しく理解することが大切なのではないだろうか。

文=松澤友子