戦前の右翼から現代のネトウヨまで…右翼を知ることで、日本のいまと未来が見えてくる!?

社会

2018/7/20

『「右翼」の戦後史(講談社現代新書)』(安田浩一/講談社)

 2018年3月、SNS上に登場したあるネトウヨ(ネット右翼)キャラを巡る、事の顛末が朝日新聞デジタルほか、多くのメディアでニュースになった。

 今年1月からツイッターに登場し始めた「宇予くん」なるキャラが、罵詈雑言で特定メディアや中国・韓国、反改憲派を口撃。一方で〈安倍首相、憲法改正に意欲的だど。頑張って欲しいど〉などと安倍政権を持ち上げた。

 その後、このキャラクターを操っていたのが、公益社団法人日本青年会議所(JC)の「憲法改正推進委員会」のメンバーだったことが発覚。JCは、「組織としての総意ではない」「大変申し訳ない」などと釈明、謝罪した。

 天皇を中心に、日本の民族性、伝統・文化を尊重した国づくりを理想とする「右翼」といえば、街宣カーなどをイメージする人が多いだろう。しかし、日頃はごく普通の実業家や企業戦士を装った「スーツ武装の右翼」が、社会にじわじわと影響を及ぼしている、というのが現実のようだ。

●小学生は古めかしい家族像を学び、中学校では銃剣道を学ぶ?

 では、彼らはどんな影響を与えているのか、その具体例を『「右翼」の戦後史(講談社現代新書)』(安田浩一/講談社)から学んでみよう。

 まずは本書から引用する。

2017年度に発表された中学校の新学習指導要領では、武道の選択肢として銃剣道が明記された。銃剣道は、銃剣で相手を突き殺して倒す格闘術「銃剣術」から生まれた競技である。戦前戦中は軍事教練にも採用された。

「我が国固有の伝統と文化への理解を深める観点」(中央教育審議会)からの教育方針は、歴史教科書や小学校の道徳の教科書の改訂にもみられるという。本書に登場する、ある教科書出版会社編集者のこんなコメントには驚かされる。

「今回の検定を通った道徳教科書で目立つのは、古めかしい“男女の役割分担”や古典的な家族像です。非常に復古的な描かれ方がされている」

 教育現場に忍び寄る右翼化の影。これから小学生たちが道徳で学ぶ家族像がどのようなものなのかは、ぜひ、本書でご確認いただきたい。

 教科書業界では保守団体系(つまり右翼思想の強い)出版社が採用数を大きく伸ばしているという。こうした背景には、日本最大の右派組織「日本会議」が関わっていると著者は指摘する。

 スーツ姿で社会に溶け込み、企業や官庁・政権などと一体化し、「改憲」を中心に古き良き日本の復興を目指す。著者によれば「草の根に活路を見出し、社会に浸透した右翼」である。

●伝統右翼からネトウヨまで、多様化する右翼像を浮き彫りにする

 多様化する右翼の現状をいま知ることの意義を踏まえ、著者は本書の執筆動機をこう記している。

ネトウヨを含む右翼勢力が目指すのは「改憲」だけでなく、人権、反戦、反差別といった戦後民主主義が培ってきた“常識”の否定でもある。戦後という時間に対するバックラッシュ(反動・振り戻し)である。
それは──今の日本社会そのものの姿ではないのか。
そうした時代に危機感を覚えながら、私は右翼の歴史を取材した。

 江戸末期の「水戸学」(水戸藩を出自とする学問。吉田松陰、西郷隆盛などに影響を与えた)に日本右翼の源流を求め、明治、大正、昭和、平成の今日のネトウヨに至るまでの右翼の系譜、思想、活動などを、関連する事件や社会的な出来事なども紹介しながら、「右翼とはなにか」「政治や社会に与えた影響」を時代ごとに考察する本書。メインは戦後史だが、戦前史もまとめられており、日本の右翼通史を概観できる内容だ。

 単に資料にあたるだけでなく、現役・退役の大物右翼や活動家、その子孫へのインタビューや、右翼が創始した高校や大学などへも取材を重ねた。元右翼活動家が、現在は西日本短期大学教授として、アイドル養成・輩出を研究しているエピソードのほか、多様化する右翼の実像を深掘りしながら伝えようとする姿勢に、著者のジャーリスト精神も感じられる。

「改憲」「ヘイトスピーチ」など、社会問題に関心を向ければ、「右翼」「左翼」と呼ばれる人や思想と向き合うことになる。そして、「どんな日本で暮らしたいか」「どんな日本を子供たちに残したいか」は、すべての人が考えるべき問題でもある。

 いま、社会にどんな潮流が生み出されているのか、自分はどう考えるか、人々の思想の多様性にはどのようなものがあるのか。本書は、日本のいまと未来を、自分事として考える際の大きな手掛かりになるはずだ。

文=未来遥