「セックスすると髪が薄くなる」の真相は? 知の巨人・荒俣宏がたどる、“ハゲの文化史”

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2018/8/10

『ハゲの文化史』(荒俣宏/ポプラ社)

 誰もが気にしている、けれどなかなか口にはしづらい「ハゲ」の話題。8月10日に発売された『ハゲの文化史』(荒俣宏/ポプラ社)は、この「人類とハゲ」という一大テーマについて、知の巨人・荒俣宏が真っ正面から取り組んだ一冊である。

 人はなぜハゲるのを恐れるのか。セックスするたび髪が薄くなるという噂は本当か。髪にまつわる世界の神話・伝説から最先端の増毛技術まで、ハゲと髪にまつわる興味津々のエピソードを全4部構成で幅広く紹介している。

 第一部は「髪と毛の伝承と科学」と題し、まずは体毛と髪の違いを考察。そのうえで人類が髪に「自然の力」「性的魅力」を見いだしてきたという歴史的事実を、ギリシア神話から現代のアフロヘアやパンクまで取りあげて論じる。

 第二部の「毛と髪のマジカルパワー」では、髪の毛のもつ呪術的・宗教的な側面に着目。「処女の髪を切ると貞操が失われる」などの古代のタブー、髪の毛だけに興奮を覚える「髪フェチ」のめくるめく世界など、豊富な話題に引き込まれる。

 第三部のテーマは「毛のおしゃれ、髪のよそおい」。年2回しか洗髪しなかったという平安美人のヘアケア事情や、西欧でのブロンドヘア人気の背景、近代ヨーロッパのかつらブームなど、髪の毛のファッション的側面に注目したパートである。

 そして第四部がメインディッシュともいえる「ハゲの哲学と叡智」。われわれがハゲを恐れる理由をアリストテレスまでさかのぼって深く考察しつつ、現代かつら技術のめざましい発展を紹介し、読者に希望を与えている。

 本書は、2000年に潮出版社より刊行された『髪の文化史』の増補改訂版で、この18年の間に進歩した毛髪医療とウィッグ産業についても、プロローグで詳しくフォローされている。すでにできないことはない、という現代かつらのクオリティに驚愕させられた。

 たかが髪の毛、されど髪の毛。本書を読んでいると、髪がどれだけ人類の文化に深い影響を与えてきたか、あらためて気づくことができるだろう。多くて困っている人も、少なくて悩んでいる人も、楽しめること請け合いの知的エンタメ本である。

文=朝宮運河