「頑張らない」「あきらめる」「空気を読まない」…現代人の大敵“ストレス”から身を守るために

暮らし

2018/8/15

『本当に怖いキラーストレス 頑張らない、あきらめる、空気を読まない』(茅野分/PHP研究所)

 現代社会においてストレスを感じないで生活するというのは難しい。職場でも、家庭でも、友人関係でさえストレスを生み出す場所になっている。もはや空気のように当然のものとして存在しているが、時として人の命さえ奪う「キラーストレス」へと変貌するケースもある。社会を生きる上で避けられないストレスだが、本質的な部分まで考えている人はどれだけいるだろうか。

『本当に怖いキラーストレス 頑張らない、あきらめる、空気を読まない』(茅野分/PHP研究所)では、まずストレスが心の問題ではなく、脳で管理されるものであると訴えている。過度なストレスは脳の機能を低下させ、さまざまな障害をもたらし、結果として日常生活を乱す。行動や思考、健康に至るまで、ストレスが与える影響は広範かつ根深い。これらの脅威こそ多くの人に知られており、世の中には「ストレスに負けない」「ストレスと戦う」といったワードで飾られた自己啓発本が山ほど出回っている。しかし、現代人にとって本当に必要なのは、「ストレスと上手に付き合っていく方法」を身に付けることだ。

 本書では、ストレスと上手く向き合って生活を送るための3つのキーワードを挙げている。1つ目は「頑張らない」ことだ。頑張ることの本質は、「頑張ればできる」という思い込みにあるという。たしかに努力することで達成できる目標はある。ところが、頑張ることで成功するという体験は、麻薬のような中毒性を持つ。過剰なストレスに苛まれてしまう人の多くは、「努力の中毒性」と呼べるものに陥り、到底達成できない目標のために頑張っている。客観的に見れば無理なことを、「結果を出せば認められる」「自分ならできるはず」と思い込むことで頑張り続いてしまうのだ。この傾向は、特に負けず嫌いな人に強く表れる。勝つことや成功することにこだわれば、頑張ろうとする呪縛から抜けにくくなるためだ。「頑張ってもできないことはある」と認めるのは、こうした悪循環を避け、ストレス過剰にならないで済む方法である。

 2つ目は「あきらめる」ことであり、これは簡単にいえば「いい人であることをあきらめる」という意味である。周りから「いい人」だと思われる振る舞いは、一時的には感謝され満足感が得られるものだ。しかし、一度「いい人」を始めれば、どこでも同じように振る舞うことが求められる。さらに、「八方美人だ」「媚を売っている」といった悪印象につながることも少なくない。いい人になろうとするのは、その過程においても結果においても、途方もないストレスを生む原因になる。「いい人だと思われたい」という気持ちを捨てれば、これまでよりずっと心が軽くなるというのだ。

 最後は「空気を読まない」こと。本書では「空気を読む=同調」だとして、「共感はしても同調はするな」と説く。現代日本においては、共感と同調が混同され、あらゆる人間関係に同調圧力が働く。だが、周囲に同調すれば、納得できない意見に賛同することになる。認めたくないものを認め、したくないことするというのは大きなストレスの原因だ。だから、同調ではなく「共感」することが大事だという。相手の感情や意見を認めつつ、決して自分まで同じ考えや気持ちにならない。理解は示しつつ、一定の距離を置くことで心の健全性を保つのである。

 本書では3つのキーワードを含め、ストレスと上手に付き合うための理念を説きつつ、実践的なストレス管理の方法も提示している。「ストレスコーピング」という認知行動療法的な解決策から、睡眠や運動など普段の生活を改善する具体的な方法まで書かれている。著者が医師として向き合ってきた、ストレスにより病んでしまった人々の体験談も交えつつ、現代人の生き方を問う本書は、「ストレスと戦ってしまった人」にこそ読んでもらいたい一冊である。

文=方山敏彦