18年後には3人に1人がお年寄り——高齢社会にどう向き合うか?

暮らし

2018/8/30

『おばあちゃんが、ぼけた。』(村瀬孝生/新曜社)

 現在、日本の高齢化率は27.3%だといいます(内閣府発表)。そして2036年には65歳以上のお年寄りが総人口の33.3%を占めると予想されています(同発表)。つまり、2036年には人口の3人に1人が高齢者になるという計算です。

 こうした中で、身近なお年寄りを介護しなければならない状況にある人が増えつつあることもまた事実です。わたしたちはいまお年寄りとどのように接しているでしょうか。高齢者をお荷物あつかいしてはいないでしょうか。わたしたちは若者もお年寄りも過ごしやすい社会について考えなければなりません。

 そしてまた、多くの人がいつ何時、お年寄りを介護する、あるいは介護されることになるかもわからない時代をむかえていることも踏まえると、いっそう「介護」や「ぼけ」の問題は他人事ではないということを自覚できるはずです。

『おばあちゃんが、ぼけた。』(新曜社)は老人福祉の仕事に長年携わっている村瀬孝生氏が書いた4コマ漫画入りのエッセイです。「ぼける」とはどういうことかを知れるだけでなく、ぼけてしまったおじいちゃん・おばあちゃんの一生を通して今の社会の在り方を見つめなおすきっかけになるでしょう。

■お年寄りの世界にはお年寄りのための時間が流れている

 老人ホーム、特に特別養護老人ホームという場所はお年寄りを社会生活から隔絶してしまう空間であるという見方もできるでしょう(いささか乱暴な表現ではありますが)。そこにはわたしたちの生活する社会とはまた違った独特な時間が流れているといいます。本書の著者はこの時間を「老いの時間」と表現。お年寄り一人ひとりが自分のペースでゆっくりと残りの人生の時間を過ごしているのです。

 本書に登場するウメさんは手のひらサイズのアンパンを食べるのに40分もかけているそう。また、タメノさんは茶碗に盛られた白飯をひと粒ずつ食べるので、自分ひとりで食べきるのには2時間もかかってしまうのだとか。

 わたしたちは当然「老いの時間」を生きているわけではありません。村瀬氏は、若い世代が効率を重視するあまり、お年寄りのペースとリズムを乱し、「老いの時間」が流れる世界を壊してしまうことに気づいたのだそうです。「あなたらしく生きてください。生きがいを持ってください」と声をかけているにもかかわらず、その「あなた」の生きる「老いの時間」を大切にすることはしないということに…。

 この気づきからわたしたちはなにを学べるでしょうか。今後、介護を必要とする高齢者がますます増えていくことは、まず間違いありません。そうした状況においては高齢者介護に従事する人だけでなく身近な人たちのちからもさらに必要になってきます。わたしたちは、もっと高齢者の「老いの時間」を意識しなければならないはずです。

 日々めまぐるしく移ろいゆく世の中の動きに疲れたときに、身近な高齢者の介護をしながら彼らとともにゆったりとした「老いの時間」というものを共有することがあってもいいのではないでしょうか。おじいちゃん・おばあちゃんと一緒にゆっくりと食事をとることからはじめてもいいかもしれません。一緒にお散歩に出てみてもいいかもしれません。お風呂で背中を流してあげてもいいかもしれません。こうした日常を送ることは高齢社会に生きる上でとても大切なこととなっていくと思います。

 本書を通して「老いの時間」とそれを意識することで、わたしたち、若い世代にできることについて考えてきました。本書には「老いの時間」のほかにも、「生きること」や「死ぬこと」そのものについて考えさせられるエッセイや4コマ漫画が満載です。また、巻末には詩人である谷川俊太郎さんのコメントも寄せられています。これを機に「介護」、あるいは「ぼける」ことについてもう一度じっくり考えてみませんか。

文=ムラカミ ハヤト