ダイエットでリバウンドするワケ、「昔は良かった」発言のワケは?

暮らし

公開日:2018/10/9

『それ、「心理学」で説明できます!』
(清田予紀/三笠書房)

 日常は様々な疑問であふれている。

「どうしてあの人は難しいカタカナ言葉ばかり使うのだろう……?」
「ダイエット中にまたドカ食いしてしまった!いつもなんでこうなるの!?」
「口を開けばお年寄りは、昔は良かった、って言うなぁ……」

 毎日の生活で見かけるちょっとしたこの疑問。実は、すべて心理学で解き明かせる。それを解説したのが『それ、「心理学」で説明できます!』(清田予紀/三笠書房)だ。心理カウンセラーの清田予紀先生の“説明”を少しだけのぞいてみよう。

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■カタカナ語を連発する人々がかかる「ジンクピリチオン効果」

「ワイズスペンディング(賢い支出)」
「サスティナブル(持続可能性)」
「ダイバーシティ(多様性)」

 最近よく耳にするこのカタカナ語。政治家や専門家、もしくは“意識高い系”と呼ばれる人々が積極的に使っている。日本語で表したほうがはるかに何千倍も圧倒的に分かりやすいのに、なぜ彼らは好んで口にするのだろう。

 その理由は、難しい用語を多用したほうが知的で、いかにも専門分野に精通しているように聞こえるからだ。これに着目して面白い用語を作った人がいる。日本有数のパロディストであり小説家の清水義範氏だ。その名も……「ジンクピリチオン効果」という。

 ジンクピリチオンとは、かつてあるメーカーのシャンプーに配合されていた防腐剤のこと。聞いたことのない物質名をCMで聞いた消費者は「これはなんだかすごそう!」と飛びついてバカ売れしたのだとか。

 それを模したこの造語は、心理学の世界でも大いに使われているという。今度難しいカタカナ語ばかり使う人に出会ったら、「ジンクピリチオン効果ってすごいですよね?」と直接聞いてみたいところだ。

■毎回ダイエットをしてもリバウンドする悲しいワケ

「今回こそ痩せる!!!!!」を意気込んで食事制限するものの、大事な宴会や結婚式といった外食の機会が続き、我慢しきれずリミッターが外れたかのようにドカ食い。かえって体重が増えた悲しい体験が、多くのダイエット経験者にあるはずだ。

 これは「どうにでもなれ効果」という心理が働いたせいだという。ずいぶんケッタイな心理学用語を名付けたのはジャネット・ポリヴィとC・ピーター・ハーマンという2人のダイエット研究者。

 この2人は研究で、ダイエットに挑戦する人々の多くが、少々の挫折で心が折れてしまい「もう努力してもムダだ!」と諦めがちなことに気づいた。そればかりか、「ええい!もうどうにでもなれ!」と、我慢していた反動で余計にたくさん食べてしまう人が続出したという。

 誘惑に負けたことで自己嫌悪に陥り、その気晴らしに何かを食べたくなって、結果リバウンドしてしまうのだ。

 よりによって、そこでウサ晴らししなくてもいいのに……。“食欲”というヤッカイな業を背負った人間と、進化し続ける“食文化”の闘いは、今日もどこかで繰り広げられている。

■「薔薇色の回顧」に浸るお年寄りたち

「昔は良い時代だったよ。みんな夢があった」

 お年寄りと話していると、時折こんな言葉が飛び出す。今の時代を生きる私たちには共感しがたいこのセリフ、なぜ彼らは口にしてしまうのだろう。

 清田先生によると、これは「薔薇色の回顧」と呼ばれる認知バイアス(=誰もが持つ思考の偏りのこと)が起きているためだそうだ。過去のことを当時感じていたよりも美化し、まるで薔薇色だったかのように思い出しているのだ。

 過去の記憶が美しく飾られるのには、次の理由が考えられる。

・人は、過去の悪い出来事より良い出来事のほうが記憶に残りやすい。良いことと悪いことが同時に起きている現在より、良い記憶が残る過去のほうが良かったように感じる。

・昔の自分と今の自分を比較すれば、当然昔のほうが若くて輝いていた。その錯覚で若い自分が生きた時代も輝いていたと感じる。

 お年寄りや職場の先輩たちが過去を振り返る発言をするときは、背景にこのような理由があることを悟ってあげよう。それだけで彼らの発言を疎ましく思う感情が和らぐはずだ。

 意識のありなしに関係なく、人の行動には理由がある。それを解き明かすのが心理学だ。日常で見かけたあの人のあの行動には、どんな理由が隠れているのだろうか。

文=いのうえゆきひろ