特殊清掃人が見た“孤独死現場”のリアル。部屋に残されていたのは…

社会

2018/10/5

『事件現場清掃人が行く』(高江洲 敦/幻冬舎)

「事件現場清掃人」という職業をご存じだろうか。特殊清掃人とも呼ばれる彼らの仕事内容は、室内での自殺や孤独死、事故死などで主を失った住居の清掃だ。「事件現場」「特殊」という言葉の通り、彼らが行う清掃は普通のそれではない。

 ドキュメンタリー番組への出演などでも知られる事件現場清掃人・高江洲敦氏の著書が『事件現場清掃人が行く』(幻冬舎)。その冒頭で、彼はこう語る。

“今日もまた、どこかでご遺体が発見されて私のもとに電話がかかってきます。腐敗が進んだ体からあふれ出た血液と体液、それらがもたらす強烈な汚臭に戸惑い、呆然とする人々からの連絡です。
「ご安心ください。私がきっときれいにして差し上げます」
そうです。私がやらなくて、いったい誰がこの仕事をやるのでしょうか?
その思いが、私を今日も駆り立てるのです”(本書13頁)

■孤独死を知らせる本当の「虫の知らせ」

 事件現場(事故物件)からの「虫の知らせ」は、本当に「虫」が知らせてくれるのだという。孤独死は強烈な臭いによって発見されるケースが多いが、臭いよりもさらにはっきりと分かるのが虫、とりわけハエの存在なのだとか。

 遺体の腐敗臭に誘われ、どこからともなくハエが飛んでくる。屍肉を食べ、卵を産み付け、幼虫は屍肉を食べながら成長してサナギ、そして成虫へ…。そのサイクルで膨大に増殖するそうだ。

 そしてある日、配達員が郵便物を入れようとドアのポケットを開いた瞬間にハエが溢れるように飛び出してくるのだという。異変に動揺した配達員から大家さんや警察に通報が入り、そこから孤独死が発覚するケースも多々あるそうだ。

■老人よりも中年男性のほうが孤独死リスクが高い

 孤独死をするのは年金暮らしの老人が多いとイメージしがちだが、実際には50~60代の男性が多いという。著者は職業経験上、失業して生活保護を受けていたり、日雇いなどの不安定な仕事をしたりしている男性が亡くなった部屋を清掃することが多いそうだ。

 一般的には50代といえばまだまだ働き盛りなのに、なぜか。著者の経験では、その年代で孤独死する男性には、不摂生の跡が見えることが多いという。居室に酒の空き缶、瓶や袋に詰め込まれたコンビニ弁当の容器…そんなケースが多いようだ。「この世代の男性の孤独死には、いつもわびしさがつきまといます」。著者はそう語る。

 孤独死や自殺のあった「事件現場」は想像を絶するもので、この清掃は誰もができれば避けたいと思うような仕事である。だが、著者の高江洲氏は常に仕事人としての誇りを持ってこの任務にあたっていることが本書の全編を通じてうかがえる。詐欺まがいのリフォームも横行する中、彼は高い経験値に裏付けられた技術と、真摯に故人に向き合うプロの姿勢で、多数の遺族や大家さんを安心させてきた。彼は亡くなった方の最期を看取り、弔う気持ちで、その居室の清掃にあたっている。

 また、死者の痕跡をきれいになくすことで家にふたたび命を与え、遺族や家主に安心してもらうことで、亡くなった方も喜んでくれるのではないか。そうした真剣な気持ちが、今日もまた彼を現場へと向かわせるのだろう。

 本書で語られる、著者が事件現場で感じた「故人からの無言のメッセージ」は、多くの教訓に満ちている。そして、これからの「人生のありかた」「死のありかた」を考える契機を私たちに与えてくれるのだ。

文=K(稲)