「友人から不倫を打ち明けられたら…」「ママ友トラブルはどう防ぐ?」――他人との上手な距離の取り方

暮らし

2018/10/8

『吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる』(吉本ばなな/朝日新聞出版)

 吉本ばなな氏といえば、『キッチン』(福武書店)や『TUGUMI』(中央公論新社)といった数多くの人気作品を生み出している有名小説家。そんな吉本氏が手がけた『吉本ばななが友だちの悩みについてこたえる』(朝日新聞出版)は小説やエッセイではなく、読者から寄せられた友だちの悩みに答えるというユニークな内容となっている。

 本書は『小説トリッパー』(朝日新聞出版)の2016年冬季号から2017年冬季号に連載されていた「語りおろし吉本ばななが友だちについての質問にこたえる」を加筆修正し、単行本化したもの。吉本氏は、10~60代という幅広い年齢の方が抱える全36問の友だちの悩みに言葉の処方箋を送っている。

■ママ友トラブルはどう防ぐ?

 我が子の成長は喜ばしいものだが、それに伴ってママ友トラブルが起こってしまうと、頭が痛くなる。吉本氏は、こうしたママ友トラブルが「経済の格差」によって生まれていると指摘している。

 人は自分で働かずにお金持ちになると、プライドの持ち方にゆがみが生じ、周囲に対して力の差を誇示したくなったり、権力を求めたくなったりするのだそう。さらに、大人になると似たような収入の人ばかりが集まることが難しくなるので、人間関係が複雑化して、派閥や対立が生まれてしまうのではないかと吉本氏は考えている。

 こうしたママ友トラブルを回避するには、子ども同士が仲良くなったらママ同士も距離を近づけていくことを意識してみるとよいのだそう。ママ友としてだけではなく、ひとりの人間として仲良くなることができれば、ママ友トラブルで頭を抱えなくても済むようになる。

 しかし、経済状況ではなく、周囲のママたちと価値観が違いすぎるのであれば、無理に仲良くなる必要はない。特に子どもが小さい頃はママ友として繋がっているのも短期間である可能性が高いので、「友だちナシでいこう」ではなく、「友だちナシでもいい」と大らかに考え、リラックスした雰囲気を放つのもひとつの手だと吉本氏はアドバイスしている。

 無理な馴れ合いで神経をすり減らす日々を送っている方は一度、自分が本当はどうママ友と付き合っていきたいのかを見つめ直してみよう。

■不倫には大人の品格が必要

 近年は芸能人の不倫スキャンダルがメディアで多く取り上げられており、そのたびに世間からはバッシングの声が上がっている。こうした風潮であるため、自分の友だちから「実は不倫をしている」と打ち明けられると、恋を制止したくなってしまう人も多いだろう。

 しかし、恋愛の熱を第三者が止めることは不可能に近い。特に、不倫は“叶わない”という想いが余計に盛り上げてしまうことだってある。

 そんなときは、大切な友だちに向けて吉本氏のこの言葉を送り、自分たちの恋愛を少し客観的に見つめ直してもらうとよいかもしれない。

恋の力で盛っている状態で見えるものは全部幻想だから、その状態が終わったときにその人自身を見て、まだ二人の間に何かが残っているなら付き合い続けてもいいと思います

 不倫を告白されると、つい頭ごなしに「やめたほうがいいよ」と言ってしまいそうだが、不倫の理由や相手との結びつきの強さは当人たちにしか分からないところがある。不倫はセックスを中心にした付き合いになることが多いため、盛り上がる時期を過ぎれば消滅してしまうことも少なくない。しかし、まれにお互いの人柄や生き方、考え方などに惹かれ、「彼(彼女)の最期を自分が看取りたい」と本気で思うような愛になることもある。

 そのため、否定をするのではなく、不倫の恋と真剣に向き合わせるアドバイスを友だちにしてみるのもひとつの方法だ。

 不倫の恋は普通の恋愛よりも大変で、楽しくないことも多い。それを頭に置いてもらいながら、お互いが自分らしくいられ、尊重し合えるような“大人の品格”がその不倫にはあるのかを友だちに考えてもらおう。

■久しぶりに会ってもくつろげる友情を

 結婚や出産などで友だちのライフスタイルが変わると、付き合い方もなんとなく変わってしまうもの。特に、自分が独身である場合は既婚の友達に距離を感じてしまい「あの頃に戻りたい…」と思ってしまうこともあるだろう。しかし、こうしたときは吉本氏の友情観をもとに、自分の中にある“友だちの定義”を見つめ直してみよう。

「友だちの部屋にあがって、ごろんと寝転んだり、何か飲み物ちょうだいと言えるような関係」じゃないと友情とは呼べないと思っています。お邪魔しますと言って、お家にあがってちょこんと椅子に座っている関係は、下町育ちの私にとっては友だちじゃなく知り合いです

 表面的な友だちを必要としてこなかった吉本氏のこの言葉が心に刺さる現代人はとても多いように思う。近ごろは多様な考えが認められるようになってきた分、「自分が他人にどう思われているか」ということを気にかけすぎ、表面的な友情を築き上げただけで満足してしまっている人も少なくないはず。だが、心から納得できる友情を築き上げていれば、各々のライフスタイルが変わっても関係は揺らがず、自分の意見もはっきりと伝えられるものだ。

 こうした友情を作るためには相手に対して愛を持ちながら「私は○○だと思う」という自己アピールをし、イエスマンな友だち関係を育まないようにしていくことが大切なように思う。形式的ではない想いが伝わっていれば、いくら疎遠になっても会えば笑顔になれるはずだ。

 自分にとって友だちとはどういう存在なのかを見つめ直させてもくれる本書は、心の中にある友情観に変化を与えてくれる。現在、「友だちって何か分からない…」と悩んでいる方は吉本氏の言葉を味わいながら、自分自身の心とも向き合ってみてほしい。

文=古川諭香