あなたは毒親を介護できますか? 病で倒れた毒母を受け入れたら…

文芸・カルチャー

2018/10/14

『向日葵のある台所』(秋川滝美/KADOKAWA)

 近年その関心度が増してきた毒親問題。当事者の子どもは、成長して大人になってもなお癒えることのない苦しみや葛藤に苛まれる。これがもし他人だったら、嫌な人とは関わらなければ済むだけの話だ。しかし自分の親となるとなかなかそうもいかず、厄介な問題に発展しがちだ。

『向日葵のある台所』(秋川滝美/KADOKAWA)は、46歳の主人公・麻有子と、彼女の毒母との関係を描いた小説だ。母親から精神的虐待を受けて育った麻有子は学芸員として働くシングルマザー。妊娠中に離婚した彼女は、娘の葵を女手ひとつで中学2年生まで育て上げ、母娘ふたりで穏やかに暮している。

■疎遠になっていた毒母が倒れ、受け入れることに

 ふたりで協力しながら平穏な日々を送る母娘の描写から始まる本書だが、徐々にストーリーに暗雲が立ち込めてくる。母とも姉とも折り合いが悪く、極力関わらないように努めていた麻有子。その姉からある日突然電話がかかってきた。

「お母さんが倒れたので引き取ってほしい」と告げた姉は、強引な手法で麻有子に母を押し付けてきたのだ。思い出すだけで身の毛がよだつような母親のことは当然受け入れられない。しかし彼女は、娘の葵や職場の仲間と相談していくうちに、一旦、母親を受け入れる覚悟を決める。

■毒親視線の弁明と反省が新しい

 母親を迎えに行き、家に受け入れることになった麻有子。地獄のような日々が始まると身構えていた彼女だが、母親は意外にも大人しい。母親は疎遠になっていた間に、少しずつ麻有子の育て方について反省するようになっていたのだ。

「こんな言い訳を聞いても許せないでしょうけど…」と前置きし、精神的苦痛を与えるような子育てになってしまった原因や反省が母親の口からこぼれるようになる。姉とべったりだと思われていた母親だが、「姉の子育ては失敗だったから、この子(麻有子)だけはしっかりと育てなきゃ」と力を入れ過ぎていたことなど、本人視点でないと気づかない、「毒親」の原因が見えてくるのが本書のおもしろさだ。

 母、自分、娘。最初はぎくしゃくしていた女3人の暮らしは、少しずつほぐれていく。本書の特徴として、その背景にはいつもおいしそうな料理の描写がある。癒えない心の傷を抱えながら、少しずつ相手の存在を受け入れていく。その過程で描かれる食卓の様子もまた印象的で、読後にはいつにも増して料理がしたくなった。

文=K(稲)