本当にからだにいい食事って何? アーユルヴェーダをもとにした食事法
公開日:2018/11/19
からだは食べたもので作られる、とよく耳にする。健康のために無農薬やオーガニックなど食べ物に気を使っている人が多い昨今だが、いったい、からだにいい食事とは何なのだろう。食材はもちろん、栄養バランスやカロリーが重要、と常識的には考えられる。
ところが、一般にはなじみがない、まったく新しい視点から「おいしくて健康になる食事」を提唱するのが本書『アーユルヴェーダ健美食』(イナムラ・ヒロエ・シャルマ・香取 薫・彦田治正/径書房)だ。
タイトルにあるように、本書はインドの伝承医学「アーユルヴェーダ」をもとにしている。アーユルヴェーダといえば、額にオイルを垂らしたり、目をバターで洗ったりなど摩訶不思議なことを行うエステの一種と思っている人もいるだろうが、3千年以上前から続く、WHOでは世界三大伝承医学のひとつとしても認められているものである。
日本の一般的な医学との大きな違いは、「健康を維持・増進させ病気を予防すること」に重点がおかれ、さらには「心や魂の問題を含む倫理哲学」までも含んでいることだ。要は、病気を治すだけでなく、健康で美しく、幸福で有益な人生を送るためのものである。
では、アーユルヴェーダにおける食事法とはどんなものか。〇〇には△△が効く、というようなレシピはアーユルヴェーダにもある。だが、そう単純な話ではなく、ベースにきちんとした理論がある。それがドーシャ理論だ。
この聞きなれないドーシャとは、エネルギーのことと考えておけばわかりやすいだろう。ドーシャには、次の3つがある。
・ヴァータ(動きのエネルギー)風に象徴される
・ピッタ(熱のエネルギー)火に象徴される
・カパ(結合のエネルギー)水に象徴される
ドーシャは、私たちの身体内に存在する。ほかの生き物や環境のなかにもある。3つのドーシャの割合は人によって異なり、それが体質や体格、性格などの違いとなる。例えばヴァータが強い人の特徴はやせ型で乾燥肌、無駄遣いが多い。ピッタは中肉中背、ソバカスやホクロが多く、お金は適当に使う。カパは肥満型で色白、貯金する、などだ。
ドーシャの量は一定ではなく、場所や時間、季節や年齢などによっても変化するという。アーユルヴェーダでは、このドーシャが異常に増えたり乱れたりしたときに病気が起きるとしている。例えば、アーユルヴェーダ医は、熱が出た患者がいればピッタが乱れている可能性があるとし、腫れたりむくんだりしている場合はカパの不調であるというふうに診断していく。
アーユルヴェーダの食事法とは、ドーシャを乱さず、ドーシャの状態に合った食事をとることが基本だ。
朝食をとる朝の時間というのは、緩慢さのあるカパが増える時間帯。だから消化力は弱くあまり食欲がないのが普通だ。朝食はカパを抑えるために油っけがなく、水気の少ないものが適している。食欲がないなら無理に食べる必要はない。「朝食はしっかり摂らなければいけない」と思い込んで胃に負担をかけるよりは、からだが要求していないときは、その声に従うことも「正しい食べ方」なのだ。
昼はピッタが優勢になるので、一番消化力が上がる時間帯だ。1日のうちで最もボリュームのある食事を、時間をかけて摂ることが理想とされている。また、甘味・酸味・塩味・辛味・苦味・渋味の「六味をバランスよく摂る」ことがポイントだ。
夕食は、再びカパの時間帯となり消化力が落ちるため、昼食よりは軽い食事で十分、できるだけ消化のいいものを食べる。日本の生活スタイルを考えれば夕食に重点がおかれるのは仕方がないが、それでも、自分の消化力に見合った食事をとることだけは、心がけてもらいたい。
ドーシャの増減は季節によっても変わるので、季節による食べ方もある。また、自身のドーシャ体質によっても適した食事が異なるが、体質診断や食事法の詳細については本書を参照していただきたい。本書の後半はドーシャを整え消化力を上げる食材やスパイスを使ったレシピ集となっている。スパイス料理といっても「20種類のスパイスが入ったカレー」などではなく、スーパーで手に入る数種類のスパイスで簡単に作れるものがほとんどだ。
著者のひとりのイナムラ氏はこういっている。
健康で有意義な人生を送り、長生きを楽しむためにこそ食物があるという考え方は、アーユルヴェーダ特有のものと言えるでしょう。
アーユルヴェーダのいう「健康」とは、「病気のない状態」だけでなく、気力、体力が十分にあり、心が健やかで幸福感に満ちあふれていることだ。アーユルヴェーダによってひとりでも多くの人が健康になってほしいと思う。
文=高橋輝実
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