自閉症の人が見ている世界とは? 当事者が語る「僕が飛びはねる理由」

暮らし

2018/11/20

『自閉症の僕が跳びはねる理由』(東田直樹/KADOKAWA)

自分が障害を持っていることを、僕は小さい頃は分かりませんでした。どうして自分が障害者だと気づいたのでしょう。それは、僕たちは普通と違うところがあってそれが困るとみんなが言ったからです。

 自閉症を持つ東田直樹さんのこの言葉で幕を開ける『自閉症の僕が跳びはねる理由』(東田直樹/KADOKAWA)は、人生観や世界の見方を変えさせてくれる1冊だ。

 自閉症は発達障害のひとつで、先天的な原因により「言葉の遅れ」「多動性」「対人関係での孤立」「特定のものへの固着」といった症状がみられるが、特性は人によってさまざまで、重度の知的障害を併せ持っている人もいれば、標準よりも知能指数が高い人もいるといわれている。

 そんな自閉症は名称に「自閉」というワードが含まれているせいか誤解されやすく、同じく発達障害のひとつである「アスペルガー症候群」に比べると、まだまだ正しく認知されていないように感じられる。

 健常者からしてみれば、自閉症の方が体感している世界を理解するのは難しいと思うこともあるかもしれない。しかし、それは私たちが彼らの心の声に耳を傾けられていないからかもしれない。

自閉症を個性と思ってもらえたら、僕たちは、今よりずっと気持ちが楽になるでしょう

 そう話す東田さんが語る自閉症の方が見ている世界は奥深く、健常者の日常とは違った素晴らしさがある。

■僕らがみているものは、人の声

 東田さんはもともと、会話のできない重度の自閉症であったが、パソコンや文字盤ポインティングを必死で覚え、他者とコミュニケーションを取ったり、原稿を書いたりできるまでになった。本書内では、健常者が自閉症の方に聞きたい全58個の質問に対し、当事者ならではの素直な思いを込めた回答を記してくれている。

 みなさんの中には、自閉症の方に対して「どうして話すときに目を見てくれないのだろう」「話しているとき、どこを見ているのだろうか」という素朴な疑問を感じたことがある方もいるかもしれないが、その問いに対して東田さんは、胸に刺さる回答をくれている。

みんなにはきっと、下を見ているとか、相手の後ろを見ていると思われているのでしょう。僕らがみているものは、人の声なのです

 健常者は目が合えば、相手が自分の話をしっかり聞いてくれていると感じることが多い。だが東田さんは真剣に耳をそばだてようとすると、目に映っているものが意識できなくなるため、全ての感覚器官を使うことで声を見ているのだという。彼は目を合わせないことで、相手の話を必死に聞こうとしているのだ。

 このように、自閉症の方が行う行動にはちゃんとした意味がある。それを個性として柔軟に受け止めていくことができたら、日本はもっと温かい国になれ、本当の意味での福祉が進んでいくのではないだろうか。

 本書には他にも、健常者との記憶力や言葉の捉え方の違いなども細かく解説されており、自閉症を理解するためのヒントがたくさん得られるようになっている。中でもぜひチェックしてほしいのが、タイトルにもなった“自閉症の人が飛びはねる理由”だ。その理由を知った時、きっと読者は自閉症の方が見ている世界により興味が湧き、同じ景色を見てみたいと思うようにもなるだろう。

 健常者と障害者の境界線はどこにあって、世間一般が言う「普通」とは一体何なのだろうか。そう考えさせてくれる東田さんの人生観から学ばされることはたくさんある。本作には東田さんが想いを込めて綴った短編小説も収録されているので、そちらもぜひ心で噛みしめながら読んでみてほしい。

文=古川諭香